「手土産」と「ワイロ」の境界線。社長、それ「贈収賄」かも?

メンバー紹介

ここで学べる学習用語:刑法, 業務上横領, 背任, 贈収賄, 不正アクセス禁止法

第44回: 「手土産」と「ワイロ」の境界線。社長、それ「贈収賄」かも?

俺は青木健一、ビジラボの社長だ。先日、神崎さんに会社の「担保」について教えてもらい、債権回収の最終手段まで学んだばかり。事業拡大フェーズに入り、攻めの姿勢ばかりだった俺に、守りの法務がいかに重要か痛感させられた。会社をリスクから守るために、もっと深く法律を学ばなきゃいけない。そんな思いでオフィスに戻った俺を待っていたのは、経理の斉藤さんの沈痛な面持ちだった。


1. 沈黙する経費明細、疑惑の影

「社長、少し、お時間をいただけますか?」

斉藤さんが、いつになく真剣な顔で俺に声をかけてきた。彼女の手には、何枚かの経費精算書と、いくつかの領収書が握られている。嫌な予感がした。経理担当の彼女が、こんな顔をする時は大抵、俺の認識の甘さを指摘される時か、会社の「お金」に関する厄介な問題が浮上した時だ。

「ん? どうした? 斉藤さん。また俺のコーヒー代でも怒られるのか?」 俺は冗談めかして言ったが、斉藤さんの表情は変わらない。むしろ、少し固くなったように見えた。

「いえ、そういうことではありません。……こちらの、先月の出張費と交際費の明細なのですが。」 彼女は、数枚の書類を俺のデスクに置いた。俺は軽く目を通す。営業担当の田中が使った経費のようだ。出張費のホテル代、交通費、あとは顧客との会食費用など。一見すると、何の変哲もない。

「うん、どうした?」

「…田中さんの、この時期の出張先と、交際費の相手先が、どうも一致しないんです。出張は京都だったはずなのに、この会食の領収書は東京の高級クラブのもので……。しかも、会食相手の記載も曖昧で、田中さんに確認しても、歯切れが悪いというか…。」

斉藤さんの言葉に、俺の心臓がドクリと跳ねた。田中はビジラボの立ち上げから一緒に頑張ってくれた、数少ない初期メンバーの一人だ。彼がそんな不正をするなんて、考えたくもなかった。しかし、斉藤さんの経理の目はごまかせない。彼女の言うことは、経験上、ほぼ正しい。

「田中が……? いや、まさか。なんか、勘違いじゃないか?」 俺は思わず、田中を庇うような言葉を口にしていた。信じたくない。だが、斉藤さんは首を横に振った。

「他にもいくつか、不審な点が散見されるんです。例えば、数万円の備品購入費の領収書が、なぜか田中の私物の趣味関連のものだったり、出張先の同僚へのお土産代が、同じ商品ばかりで不自然な高額だったり…。社長、これはもしかしたら…。」

斉藤さんの言葉が途切れ、沈黙が訪れる。その沈黙が、俺の胸に重くのしかかった。彼女が口にしたくない「それ」が、俺の頭の中にぼんやりと浮かび上がっていた。まさか、うちの会社で……?

「……『業務上横領』の可能性が、あります。」 斉藤さんの声は小さかったが、その言葉は俺の耳に突き刺さった。

業務上横領。その言葉が意味することは、俺にもなんとなく理解できた。会社のお金を、社員が私的に流用する犯罪行為。それが、ビジラボで、俺のすぐ近くで起こっているかもしれないという事実に、俺は背筋が凍りついた。

「マジかよ…。そんな…。田中が…?」 俺は茫然と呟くしかなかった。まさか、自分の会社で、こんな問題が起きるなんて。これまでも、労働契約や契約不適合責任、知財侵害など、色々な法務リスクを学んできた。どれもこれも、会社経営に潜む「罠」だと痛感してきた。だが、「社員が会社のお金を盗む」という、最も身近で、最も信じたくないリスクが、今、目の前で現実味を帯びている。

俺の脳裏に、田中が熱心にサービス開発に取り組んでいた姿が浮かんだ。しかし、経費の不正は、どんなに優秀な社員であろうと許される行為ではない。俺は経営者として、この問題にどう向き合うべきなのか、全く分からなかった。

2. 「手土産」か、「賄賂」か? 見えない境界線

田中がもし本当に業務上横領をしていたとしたら、どうすればいいのか。警察に相談するのか? それとも、まずは本人に問い詰めるべきか? 俺は途方に暮れていた。そんな中、別の商談の準備が迫っていた。新規の大口顧客との契約だ。

数日後、俺は気を取り直して、大手企業A社との商談に臨むことになった。この案件が取れれば、ビジラボの未来が大きく開ける。絶対に成功させたい。 商談を控えたある日、俺は神崎さんと斉藤さん、そして田中を交えて、戦略会議を開いていた。

「このA社、かなりの大手ですから、うちみたいなスタートアップには荷が重いかもしれませんね。でも、競合も多い中で、なんとか食い込みたい…。」 俺は意気込みを語る。 「ええ、社長の情熱は分かりますが、先方もリスクを考えているでしょう。契約書の内容も、慎重に詰める必要があります。」 神崎さんが冷静に指摘する。

「そうですね。それにしても、先方の担当者、結構厳しそうだったなぁ。部長クラスの方が対応してくださるんだけど…」 俺は腕を組み、頭をひねった。どうすれば、先方の心を掴めるだろうか。

その時、俺の頭にあるアイデアが閃いた。 「そうだ! 向こうの部長さん、ゴルフ好きだって聞いたんだよな。よし、次の商談の時、ちょっと高級なゴルフボールのセットとか、お酒とか、持っていくか! いわゆる『手土産』ってやつだ。それで、ちょっとでも顔を覚えてもらって…。」

俺は名案を思いついたとばかりに、目を輝かせた。営業マン時代、ちょっとした「気遣い」で相手との距離を縮めるなんて、当たり前のようにやっていたことだ。それが、契約につながることも多々あった。

だが、俺の発言を聞いた斉藤さんが、また眉をひそめた。 「社長、それは……。あまり、お勧めできません。」

そして、神崎さんは、冷ややかな視線を俺に向けた。 「青木さん、その『手土産』、法的には『贈収賄』に繋がりかねない、非常に危険な行為ですよ。最悪の場合、『背任罪』に問われる可能性すらあります。」

「え!? マジっすか!? 手土産ですよ!? 営業の常識じゃないですか!」 俺は驚いて、椅子から半身浮き上がった。たかが手土産で、贈収賄? 背任? 犯罪? 何を言っているんだ、この人は。俺は悪気なんて全くない。ただ、会社のために、少しでも良い印象を与えたいと思っただけなのに。

斉藤さんも、田中も、不安そうな顔で俺と神崎さんを見ている。 「社長、私たちは『株式会社』として活動している以上、ただの『手土産』が、世間からどう見られるか、という視点を持つ必要があります。」 神崎さんの言葉は、氷のように冷たかった。

業務上横領の疑惑が田中にかかっている上に、俺自身も犯罪に手を染める可能性があると指摘されるなんて、全くもって想像していなかった。会社が大きくなるにつれて、こんなにも「犯罪」が身近に潜んでいるとは…。俺は、恐怖と混乱で頭がいっぱいになった。

3. 神崎の法務レクチャー:ビジネスに潜む「犯罪」の影

「青木さん。あなたは『会社を守る』ことに熱心ですが、その『守る』べき領域が、民事の紛争だけでなく、『刑事罰』という最も重い結果に繋がる行為からも、会社とあなた自身を守る必要があると、まだ十分に理解していませんね。」

神崎さんの鋭い視線が、俺を射抜く。 「ここまで学んできた『民法』や『会社法』は、主に企業活動における『契約』や『組織運営』に関するルール、つまり『民事』のルールです。これに違反すれば、損害賠償や契約解除といった民事上の責任を負います。しかし、『刑法』は全く性質が異なります。それは、社会の秩序を保つために、国家が『犯罪』と定義し、違反者には『懲役』や『罰金』といった刑事罰を与える、究極のルールブックなんです。」

俺はゴクリと唾を飲んだ。懲役や罰金。それは、会社の損害賠償とは比べ物にならないほど、重い響きだった。

【神崎の法務レクチャー】

「まず、斉藤さんが指摘した田中さんの経費精算の件からお話ししましょう。これは『業務上横領』に該当する可能性が極めて高いです。」

【神崎の補足解説】業務上横領(ぎょうむじょうおうりょう)とは?

刑法第253条に定められた罪で、「業務上自己の占有する他人の物を横領すること」を指します。会社のお金や物を業務として管理・使用する立場にある者が、その物やお金を自分のものにしてしまう行為です。

ビジラボ(スタートアップ)における影響: スタートアップでは、資金が限られているため、横領による損害は経営に致命的な打撃を与えかねません。また、社内の信頼関係が崩壊し、組織の士気低下にも繋がります。経営者としては、厳正な対応が求められます。

「業務上横領のポイントは、『業務上自己の占有する他人の物』を『横領』することです。田中さんはビジラボの営業担当として、会社の経費や備品を管理・使用する業務を担っていました。その立場を利用して、会社のお金を私的に流用したり、会社の備品を自分のものにしたりすれば、まさに業務上横領に該当します。」

「田中さんのケースで言えば、出張費の不正請求、高級クラブでの会食の相手が曖昧、私物の趣味関連備品の購入など、これらが事実であれば、会社の財産を横領したと判断される可能性が高いです。横領罪は非常に重く、懲役刑が科せられることもあります。会社としては、まずは事実関係の徹底的な調査と、本人からの弁明を聞く必要がありますが、状況によっては刑事告訴も視野に入れるべきです。」

俺は思わず、ゾッとした。田中が、まさかそんなことまで…。刑事告訴なんて、想像するだけで胃がキリキリする。

「次に、青木さんの『手土産』の話です。これは公務員への贈答であれば『贈収賄罪』、民間企業間でも状況によっては『背任罪』や『不正競争防止法』に抵触する可能性があります。」

【神崎の補足解説】贈収賄(ぞうしゅうわい)とは?

公務員がその職務に関して賄賂を受け取ること(受託収賄罪:刑法第197条)や、賄賂を贈ること(贈賄罪:刑法第198条)を指します。ここでいう「賄賂」は、職務に対する不正な利益供与全般を指し、金銭だけでなく、物品、接待、旅行など、あらゆる形の経済的利益が含まれます。

ビジラボ(スタートアップ)における影響: 公務員との取引がある場合、贈賄罪に問われるリスクがあります。直接の公務員との接触がなくとも、大手企業が公務員への贈賄に関与していた場合、その取引関係を持つビジラボも風評被害を受ける可能性があります。また、民間企業間での過度な接待も、企業倫理上問題視されることがあります。

「まず、贈収賄罪は原則として『公務員』が対象です。青木さんが今回相手にしようとしているのは民間企業の方なので、直接の『贈収賄罪』は成立しません。しかし、民間企業間でも、例えば、特定の取引相手から過度な接待や金品の提供を受けることで、自社の意思決定が歪められ、会社に損害を与えるような場合は、『背任罪』に問われる可能性があります。」

「また、民間企業間でも不正な利益供与を防ぐためのルールとして『不正競争防止法』があります。特定の競合他社を排除するために、相手企業の役職員に不当な利益を与えたりすれば、刑事罰の対象となる可能性があります。」

「青木さんが考えた『高級なゴルフボールのセット』は、一般的な社交辞令の範囲を超える可能性があります。特に、契約の獲得という明確な目的がある中で、相手の職務上の行為に影響を与えようとする意図があると見なされれば、非常に危険です。相手企業の規定で、贈答品受け取りが禁止されていることもありますから、無用なトラブルを避けるためにも、安易な贈答は控えるべきです。」

俺は顔面蒼白になった。まさか、自分の善意(?)が、そんな重い罪に繋がるなんて。営業マン時代に当たり前のようにやっていたことが、今となっては恐ろしい行為に見えてくる。

「そして、『背任罪』についてです。」

【神崎の補足解説】背任(はいにん)とは?

刑法第247条に定められた罪で、「他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えること」を指します。会社法上の「特別背任罪」は、取締役などの役員が対象となり、より重い罰則が課せられます。

ビジラボ(スタートアップ)における影響: 経営判断が、結果的に会社に損害を与えてしまった場合、背任罪に問われるリスクがあります。特に、青木さんは社長であり、会社の財産を管理し、事業を運営する「他人のためにその事務を処理する者」の代表です。自己の利益や特定の第三者の利益を優先して会社に損害を与えれば、この罪の対象となります。

「青木さんはビジラボの社長として、会社の利益を最大化する義務、すなわち『善管注意義務』を負っています。もし、あなたが『高級なゴルフボール』を贈ることで、会社に不必要な支出をさせ、その結果、本来もっと有利な条件で契約できたはずなのに、それを逃したり、あるいは不当な契約を受け入れたりして会社に損害を与えた場合、それが『背任』と見なされる可能性があります。」

「青木さん、あなたが営業マン時代に経験したことは、あくまで『個人の成績』のためだったかもしれません。しかし、今は『社長』です。あなたの行動は、全て『ビジラボ』という法人の行為として評価されます。その視点が決定的に欠けています。会社という公器を私物化するような行為、個人的な感情や目先の利益に囚われた行動は、会社に致命的な損害を与えかねないのです。」

俺は、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。俺は、ずっと「会社のために!」と思って行動してきたつもりだった。だが、その「会社のため」という思考が、法律の観点から見れば、非常に甘く、危険なものだったと、今初めて突きつけられた。

「最後に、『不正アクセス禁止法』について少し触れておきましょう。これは直接的な横領や背任とは異なりますが、情報化社会においては、会社内部のシステムやデータへの不正なアクセスが、業務上横領や背任の端緒となることがあります。例えば、田中さんが会社のサーバーから顧客情報を不正に持ち出したり、経費システムを改ざんしたりする行為は、この法律に抵触します。」

【神崎の補足解説】不正アクセス禁止法(ふせいアクセスきんしほう)とは?

正式名称は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」。インターネット等の情報ネットワークに接続されたコンピュータに対し、正当な権限なく侵入する行為(不正アクセス行為)や、それを助長する行為を禁止する法律です。

ビジラボ(スタートアップ)における影響: IT企業であるビジラボにとって、システムへの不正アクセスは企業の存立を脅かす重大なリスクです。従業員による内部犯行も対象となるため、厳格なアクセス管理と監視体制が必須です。

「IT企業であるビジラボは、顧客データや社内機密情報など、多くのデジタル資産を扱っています。もし社内の人間が、権限なくこれらにアクセスし、情報を持ち出したり改ざんしたりすれば、それは『不正アクセス禁止法』違反です。業務上横領と並行して、またはその手段として行われることも少なくありません。情報セキュリティに対する意識も、経営者として極めて重要な責務です。」

神崎さんの言葉に、俺はただ頷くしかなかった。犯罪というものが、こんなにもビジネスの身近なところに、しかも多様な形で潜んでいるとは。そして、それが会社の信用や存続だけでなく、経営者や社員個人の人生まで脅かすものだという現実に、俺は身震いした。

4. 俺の「善意」が「悪意」に変わる時

神崎さんのレクチャーは、俺の頭の中に深く突き刺さった。これまで、法律は「面倒なもの」「自分たちを縛るもの」と捉えがちだったが、それは「犯罪から自分たちを守る盾」でもあると同時に、「自らが意図せず犯罪者になってしまうかもしれない危険性」を孕んでいる、ということを痛感した。

「神崎さん、要は……俺がA社に『手土産』を持って行ったら、『営業努力』じゃなくて、『ワイロ』と見なされる可能性があって、最悪『背任罪』に問われるかもしれないってことっすか?」

俺は震える声で確認した。自分の認識が、まだズレているかもしれないと怯えながら。

「その通りです、青木さん。あなたの『善意』が、客観的には『不正な利益供与』と判断され、会社に損害を与える『背任』行為と見なされるリスクがある。特にあなたは社長ですから、その責任は重い。公務員でなくとも、現代の企業倫理や法令遵守の観点から見れば、それは極めて不適切です。」

神崎さんの断言に、俺は深く項垂れた。俺の「常識」は、もう通用しない。スタートアップの社長として、世間の「常識」、そして「法律」の常識にアップデートしなければ、会社どころか、自分自身の人生まで破滅させてしまうかもしれない。

田中への業務上横領疑惑についても、目を背けてはいけない現実だ。信じたくない気持ちは山々だが、斉藤さんの指摘は無視できない。従業員による不正は、会社の信頼を根底から揺るがす。きちんと事実を確認し、適切な対応を取らなければならない。それは経営者である俺の責務だ。

「分かりました…! 神崎さん…。俺、完全に意識が甘かったです。会社を守るって言っても、ただ契約書に気をつければいいって話じゃないんですね。自分や社員の行動一つ一つが、会社を、そして俺たち自身を、犯罪の危険に晒す可能性があるってこと…肝に銘じます。」

俺は拳を握りしめた。情熱と勢いだけで突っ走ってきたこれまでの俺では、いつか致命的なミスを犯していたかもしれない。いや、もう犯しそうになっていたんだ。

「まず、A社への手土産は絶対にやめます。そして、田中には…しっかり話を聞きます。斉藤さんにも協力してもらって、事実関係を徹底的に調べます。もし本当に不正があったら、会社としてどう対応すべきか、また相談させてください。」

俺は、自分の無知と未熟さを痛感しながらも、このピンチを乗り越える決意を固めた。会社を守るということは、民事の紛争だけでなく、刑法という最も重い領域からも守ることを意味する。それは、経営者としての、最も重く、そして避けられない責任なのだ。

5. 会社の信頼、守るべきは数字だけじゃない

田中への疑惑、そして俺自身の危険な認識。今日学んだことは、俺の経営者としての意識を大きく揺さぶった。斉藤さんとの話の後、すぐに田中を呼び出し、事情を聞くことにした。田中は最初は困惑し、しどろもどろだったが、最終的にはいくつかの不正を認めた。そこには、俺が知らなかった彼の個人的な経済的困窮があった。

俺は怒りよりも、なんとか彼を救えないかという気持ちが強かった。しかし、神崎さんの言葉が脳裏をよぎる。「会社という公器を私物化するような行為、個人的な感情や目先の利益に囚われた行動は、会社に致命的な損害を与えかねないのです」。俺は経営者として、私情を挟むべきではない。

会社として厳正な対応を取ることを決意し、斉藤さんと相談しながら、本人への弁済請求、場合によっては退職勧告、そして再発防止策の徹底を講じることになった。辛い決断だったが、会社の信頼と健全な経営を守るためには、避けて通れない道だ。

そして、俺自身もだ。これからは、自分の行動一つ一つが、会社の「コンプライアンス(法令遵守)」に合致しているかを、常に自問自答しなければならない。営業時代の「常識」が、社長としての「非常識」になり、さらには「犯罪」に繋がりかねないという現実を突きつけられた今、俺は、改めて経営者の重責を噛み締めていた。

「法務、マジでヤバいけど、やるしかねぇ…。会社を守るためにも、社員を守るためにも、そして自分自身を守るためにも、この『見えない犯罪の影』から目を背けちゃいけないんだ…!」


2. 記事のまとめ

📚 今回の学び(神崎メンターの総括)

  • [学習ポイント1]: 刑法は社会秩序を守るための最も重いルールであり、ビジネス活動においても懲役や罰金といった重い刑事罰に繋がる可能性がある。民事の紛争とは全く異なる次元のリスクを認識する必要がある。

  • [学習ポイント2]: 業務上横領は、従業員が会社の財産を私的に流用する犯罪であり、会社に経済的・信頼的損害を与えるだけでなく、個人の刑事責任も問われる。

  • [学習ポイント3]: 贈収賄は公務員が対象だが、民間企業間での過度な贈答品や接待は、企業倫理に反するだけでなく、状況によっては背任罪や不正競争防止法に抵触するリスクがある。

  • [学習ポイント4]: 背任罪は、会社の役員や従業員が、自己や第三者の利益のために任務に背き、会社に財産的損害を与える行為。特に経営者は、経営判断が背任と見なされないよう、常に会社の利益を最優先する義務がある。

  • [学習ポイント5]: 不正アクセス禁止法は、情報システムへの不正な侵入を禁じる法律。IT企業は特に、従業員による内部犯行も含め、厳格な情報セキュリティ管理が必須。

今週のリーガルマインド(神崎の教訓) 「法律を知らないことは、地図もコンパスも持たずに嵐の海へ出航するのと同じです。しかし、『刑法』というルールは、その船を沈めるだけでなく、あなた自身を海の底へ引きずり込む鎖にもなりかねません。経営者の『善意』が、意図せず『犯罪』に転じないよう、常にその境界線を意識してください。」

💭 青木の気づき(俺の学び)

  • 「法律って、契約とかトラブルとか、何かあった時に『守る』ためのものだと思ってたけど、まさか俺たちの行動一つ一つが『犯罪』になる可能性があるなんて、想像もしてなかった。マジでヤバい。会社の信用どころか、社員の人生まで壊しかねないんだ…。」

  • 「営業時代の『常識』は、社長になった今、『非常識』どころか『違法行為』に転じるリスクがある。自分の役割が変わったんだから、頭の中も全部アップデートしなきゃダメだ。これからは『会社のために』という漠然とした善意じゃなくて、『法律に照らして正しいか』を常に問うようにする。」

  • 「社員の不正も、目を背けちゃいけない。信じたい気持ちはあるけど、経営者としては会社のルールと信頼を守るのが最優先。厳しい決断だけど、それが会社を守るってことなんだ…。」


3. 次回予告

田中との話し合いは苦渋の決断を迫られるものだったが、俺は会社の未来のために前を向くことを決めた。そんな中、ビジラボは新たな資金調達の機会を得ることになった。しかし、それはこれまで学んできた「担保」の知識をはるかに超える、複雑な「金銭貸借」と「保証」の世界だった。銀行からの融資、そして投資家からの出資。お金を集めることの難しさと、そこに潜む法的リスクに、俺はまたしても頭を抱えることになる……。

次回: 第45回 「担保」を取る! 人的担保(保証・連帯保証)

\ 最新情報をチェック /