総合演習(中編)「VCとの投資契約書。ハンコ押す前に、これ読めますか?」

メンバー紹介

ここで学べる学習用語:増資(会社法)、投資契約(契約法務)、種類株式(会社法)、表明保証(契約法務)、コベナンツ(契約法務)、ストックオプション(労働法)


第65回: VCとの投資契約書。ハンコ押す前に、これ読めますか?

前回、新規事業『ビジラボAIアシスタント』のローンチに向けて、神崎さんに法務リスクを徹底的に洗い出してもらった俺たちビジラボ。著作権、個人情報、PL法…気が遠くなるようなリスクの山だったが、田中と斉藤、そして俺の熱意で、何とかその山を乗り越え、いよいよサービス提供の準備が整いつつあった。 そんな俺たちの元に、大きなニュースが飛び込んできた。かねてから交渉していたベンチャーキャピタル(VC)、『フューチャー・グロース・キャピタル』からの正式な出資オファーだ。 数千万円単位の資金調達。俺たちは歓喜に沸いた。これで一気に、ビジラボは次のステージに進める。そう信じて疑わなかった、あの契約書が俺の目の前に現れるまでは——。


1. 夢の資金調達、その先に潜む『黒い紙の塊』

「社長!やりましたよ!フューチャー・グロースさんから、出資の意思表示、正式に来ました!」

斉藤の弾んだ声がインキュベーションオフィスに響き渡る。モニターには『投資意向表明書(LOI)』という聞き慣れない文書が表示されていた。そこには、数千万円という具体的な金額と、出資の条件がずらりと並んでいる。

「うおおお!マジか!ついに来たぁぁぁ!田中!斉藤!これで俺たちのサービス、一気にアクセル踏めるぞ!」

俺は興奮のあまり、オフィスの狭い通路で飛び跳ねた。田中も「これであの機能も、あの改善も、一気に進められますね!」と目を輝かせている。斉藤も珍しく口元を緩め、どこか誇らしげだ。

ここ数週間、俺はVCとの面談漬けだった。ビジラボのビジョンを語り、サービスモデルを説明し、未来の夢を熱弁する。正直、営業時代から鍛えられたトークスキルで、どこまでもいけると思っていた。そして、その情熱が実ったのだ。 俺たちは、ようやく大企業への階段を上り始めたんだ。そう、誰もが信じていた。

「よかったですね、社長。これでビジラボも一安心…」 「ええ、斉藤さん、本当にありがとう!これもみんなで頑張ったおかげだ!」

だが、斉藤の言葉の途中で、どこか不安げな表情がよぎったように見えた。俺は興奮のあまり、その変化を見過ごした。数日後、その不安の正体が目の前に現れることになる。

VCから送られてきたのは、厚さ数センチにも及ぶA4の書類の束だった。表紙には『投資契約書』と大きく書かれている。 「え、何これ…まさか、辞書?」 俺が恐る恐るページをめくると、そこにはこれまで見たこともないような、難解な法律用語がぎっしりと並んでいた。

『増資』『種類株式』『表明保証』『コベナンツ』『ストックオプション』『優先清算権』『希薄化防止条項』『ドラッグアロングライト』…

「うわああああ!何じゃこりゃあ!俺、日本語読めねぇのか!?」

俺は悲鳴を上げた。これまでの契約書とは、まるで次元が違う。第2章で散々学んできた『売買契約』や『賃貸借契約』なんて、子どものお絵描きレベルに思える。一つ一つの単語が、まるで呪文のように俺を追い詰める。 VCの担当者からは「青木さん、契約書はご確認いただけましたでしょうか?他の投資案件も控えているので、なるべく早くご署名いただけると助かります」と、優しげだが、有無を言わせないプレッシャーのメールが届いている。 資金は欲しい。喉から手が出るほど欲しい。でも、この黒い紙の塊に、何を書いてあるのかも分からずにハンコを押すなんて、怖すぎる。しかし、早くサインしないと、このチャンスを逃してしまうかもしれない…!

「はぁ…もう、このままハンコ押してしまおうか…どうせ細かいことだろ?」 自暴自棄になりかけたその時、背後から冷静な声が聞こえた。

「社長、ちょっと待ってください。それ、絶対にやっちゃダメなやつですよ」

振り返ると、そこには腕を組み、冷ややかな視線を契約書に送る斉藤の姿があった。 「こんな重要な契約書、神崎先生に見ていただかないと、後で取り返しのつかないことになりますよ…!」

斉藤の言葉に、俺はハッと我に返った。そうだ、俺には神崎メンターがいるじゃないか! 俺は、まるで藁をも掴む思いで、分厚い投資契約書を抱え、神崎さんのオフィスへと駆け込んだのだった。

2. 「それは『会社の憲法』にまで影響します」神崎の冷徹な指摘

神崎さんのオフィスは、いつもと変わらない静けさに包まれていた。俺の興奮と焦燥が、まるで場違いなノイズのように感じられる。

「神崎さん!大変です!VCからこの契約書が送られてきたんですけど、もう、何が何やら…!でも、早くサインしないと資金が…!」 俺はテーブルにドサリと契約書を置くと、早口でまくし立てた。顔面はきっと蒼白だったに違いない。

神崎さんは、そんな俺を落ち着かせるように、ゆっくりとお茶を淹れた。そして、俺が持ってきた契約書を手に取ると、パラパラと数ページめくっただけで、小さくため息をついた。

「青木さん、落ち着いてください。その『投資契約書』は、単なるお金の貸し借りではありません。これは、あなたの会社の未来、経営権、そして従業員の士気にまで深く関わる、非常に重要な、言うなれば『会社の憲法』のようなものです」 神崎さんの言葉は、俺の楽観的な認識を真っ向から否定した。

「会社の、憲法…?」 俺は呆然と繰り返す。憲法と言えば、第1回で『公法』としてざっくりと学んだ国家の基本法だ。それが、ビジラボという一企業の契約書に適用されるとは。

「ええ。資金調達、特にVCからの出資というのは、単に『お金をもらう』という話ではないんです。彼らは会社の成長を支援する代わりに、あなたの会社の『株主』となります。そして、株主になれば、当然ながら会社の経営に対する発言権、そして権利を持つことになる」 神崎さんは、契約書のある条項を指差しながら、淡々と説明を続ける。 「ここを見てください。『株式の種類』『取締役の選任』『ストックオプション』。そして、『表明保証』や『コベナンツ』。これら一つ一つが、これからビジラボがどう運営され、誰がその方向性を決め、誰が利益を得るか、を規定しているんです」

「増資って、単に株を増やすだけじゃないんですか?俺の株がちょっと減るくらいでしょ?」 俺の素朴な疑問に、神崎さんは静かに首を振った。 「青木さん、その認識は『致命的』に間違っています。増資は、会社の資本金を増やす行為ですが、それに伴って発行される『株式』には、様々な種類があり、それぞれ異なる権利が付帯している。特にVCは、出資額に見合った、あるいはそれ以上のコントロール権を求めるのが常です。これは、あなたの経営権に直結する話ですよ」

俺は、これまで積み上げてきた法務知識が、まるで砂上の楼閣だったかのように崩れ去る感覚を覚えた。VCとの投資契約。それは、俺がこれまで学んできたどの法律よりも、ビジラボの未来に直接影響を与える、巨大な『法』の壁として立ちはだかったのだ。

3. 神崎の法務レクチャー:未来を左右する投資契約の『三大要素』

【神崎の法務レクチャー】

「青木さん、先ほど言った通り、この投資契約書を読み解く鍵は、大きく分けて三つあります。『資金調達(増資)』『経営権(ガバナンス)』、そして『従業員のインセンティブ(ストックオプション)』です。一つずつ、確認していきましょう」

1. 資金調達と株式の種類(会社法)

「まず、『増資』についてです。これは、会社が新たに株式を発行し、その対価として出資者から資金を得る行為ですね。ビジラボにとっては成長のための燃料ですが、同時に、発行される株式の種類によっては、既存の株主、つまり青木さんの持つ権利に大きな影響を与えます」

【神崎の補足解説】増資(ぞうし)とは?

会社が新たな株式を発行し、その対価として株主から金銭などの出資を受け、資本金や資本準備金を増加させる行為です。企業が事業拡大や設備投資などのために資金を調達する主要な手段の一つであり、上場企業の場合は市場から広く資金を募ることもあります。スタートアップにおいては、VCなどからの出資は、この増資によって行われるのが一般的です。

「VCが出資する際に発行される株式は、普通株式だけでなく、『種類株式』である場合が多いです。例えば、『優先株式』や『拒否権付株式』などですね」

「え、優先株式?何ですか、それ?」

「優先株式とは、配当や残余財産の分配において、普通株式よりも優先される権利を持つ株式のことです。もし会社が倒産したり、M&Aで売却されたりした際、VCはまず優先的に投資額を回収できる、といった条項が付いていることがあります」

「ずるいじゃないですか!俺の方がリスク取ってるのに…」

「VCも大きなリスクを取って投資している以上、優先的にリターンを得られるように設計するのは自然なことです。そして、もっと重要なのが『拒否権付株式』です。これは、特定の重要事項について、その株式を保有する株主の同意がなければ、会社が決定できないという権利です」

「ちょ、ちょっと待ってください!それって、俺が社長なのに、勝手に何も決められなくなるってことですか!?」

「その通りです。例えば、取締役の選任や解任、定款変更、事業譲渡など、会社の根幹に関わる事項について、VCが拒否権を持つ種類株式を保有した場合、彼らの同意なしには進められなくなります。これは、あなたの会社の経営権に対するVCの強いコミットメント、あるいは監視機能と捉えることができますね。彼らはリスクを取る分、経営への関与、そして自らの投資を守るためのコントロールを求めるわけです」

「うぐっ…それは…」

「また、増資は既存株主の『株式希薄化』にも繋がります。これまで青木さんが100%持っていた株式が、新たなVC株主の登場によって、例えば80%になる。さらに次のラウンドで別のVCが入れば、50%を切る可能性もある。経営権を維持するためには、常に発行済株式総数に対する自身の持ち株比率を意識し続ける必要があります」

2. 投資契約の重要条項(契約法務)

「次に、投資契約書に盛り込まれる具体的な条項についてです。これは会社法だけでなく、契約法務の知識がフルに要求されます」

「もう、聞くだけで頭が痛くなってきます…」

「最も基本的なものとして、『表明保証条項』があります。これは、投資実行日や契約締結日において、ビジラボがVCに開示した情報が全て真実であり、正確であることを保証するものです。例えば、財務状況、法務、事業内容、訴訟の有無、知的財産権の状況など、あらゆる情報が対象となります」

【神崎の補足解説】表明保証(ひょうめいほしょう)とは?

M&Aや投資契約において、契約当事者の一方(この場合はビジラボ)が、契約締結時点または特定の時点における会社の事業・財務・法務・資産などの特定の事実について、その真実性・正確性を相手方(VC)に対し表明し、保証する条項です。もし保証した内容が虚偽であったり、正確でなかったりした場合、保証した側は損害賠償責任などの法的責任を負うことになります。

「もし、その表明保証に違反があった場合、損害賠償責任が発生します。青木さん、前回の『知的財産権』や『個人情報保護法』を覚えていますか?もしあの時の管理が甘く、特許侵害や情報漏洩のリスクを隠して表明保証してしまったら、後で大変なことになりますよ」 神崎さんの言葉に、俺は背筋が凍りついた。そうだ、あの時学んだ知識は、こんなところでも活きてくるのか…。もしあの時、適当に済ませていたら、今頃、取り返しのつかない状況に陥っていたかもしれない。

「次に、『コベナンツ』、つまり財務制限条項などですね。これは、VCが投資先の経営に一定の制限を設ける条項です。例えば、資金使途の制限、追加の借入の制限、役員報酬の変更、M&Aや重要な事業譲渡など、特定の重要事項についてVCの事前の同意を必要とするといった内容が含まれます」

「ええっ!?それじゃ、俺の経営の自由度がめちゃくちゃ奪われるじゃないですか!」

「その通りです。しかし、VC側からすれば、投資した資金が計画通りに使われ、会社の価値が棄損されないようにするためのリスクヘッジです。これは『契約自由の原則』に基づいて交渉可能な部分もありますが、VCもプロですから、譲れない一線は持っています。他にも、VCへの定期的な『情報開示義務』や、M&A時の『優先清算権』、『ドラッグアロング(強制売却権)』や『タグアロング(共同売却権)』といった、VCにとって有利な条項が盛り込まれることも少なくありません」

「ドラッグアロング?何ですかそれ…なんか、怖いんですけど」

「ドラッグアロングライトは、VCがある条件を満たした場合、他の株主(青木さんを含む)に対し、VCが提案する条件で株式を売却することを強制できる権利です。つまり、あなたが会社を売りたくなくても、VCの判断で売却が進められる可能性がある。逆にタグアロングは、VCが株式を売却する際に、他の株主も同条件で一緒に売却できる権利で、少数株主保護の側面があります」

「ひぃぃぃ…まるで、会社の主導権を少しずつ渡していく契約じゃないっすか…」

3. 従業員のインセンティブ(ストックオプション)(労働法)

「最後に、『ストックオプション』についてです。これは、優秀な人材を惹きつけ、定着させるための非常に重要なインセンティブ制度であり、会社法だけでなく、労働法や税法の知識が深く関わってきます」

【神崎の補足解説】ストックオプションとは?

会社の役員や従業員に対し、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で将来会社の株式を購入できる権利を付与する制度です。株価が上昇した場合、権利行使価格と市場価格の差額が利益となるため、会社の成長を促すインセンティブとして活用されます。税制上の優遇措置を受けられる「税制適格ストックオプション」と、そうでない「非税制適格ストックオプション」があります。

「ストックオプションの最大の目的は、従業員と会社の成長を連動させ、エンゲージメントを高めることです。ですが、設計を誤ると、従業員の税負担が大きくなったり、期待通りのインセンティブにならなかったりします」

「税負担?ストックオプションって、タダで株をもらえるみたいなイメージだったんですけど…」

「いいえ、青木さん。将来、権利を行使して株式を取得し、それを売却する際に、利益に対して税金がかかります。特に重要なのが、『税制適格ストックオプション』か『非税制適格ストックオプション』か、という違いです。税制適格の要件を満たせば、権利行使時には課税されず、株式売却時にのみ課税される『分離課税』が適用されるため、税負担が軽くなります。しかし、要件を満たさない『非税制適格』の場合、権利行使時と売却時の二段階で課税される可能性があり、従業員の負担は非常に重くなります」

「ええっ!?そんな違いがあるんですか!?」

「ええ。この要件には、権利行使価格が公正な金額であること、付与から行使まで一定期間が経過していること、年間行使額の上限など、細かいルールがあります。さらに、ストックオプションには『ベスティング期間』や『成績条件』といった権利行使条件が設定されることも多く、従業員の長期的なコミットメントを促すよう設計されます。これは、会社法や労働法、税法の知識を横断的に活用して、慎重に設計する必要があるんです」

神崎さんの解説は、容赦なく俺の無知を突きつけた。投資契約書は、ただ資金をもらうための紙切れではなく、ビジラボの、そして俺たちの未来を規定する、まさに『航海図』そのものだったのだ。

4. 経営権の譲渡?青木の葛藤と「会社の未来」への決意

神崎さんの丁寧かつ容赦ない解説を受け、俺は「俺の会社なのに、こんなに縛られるのか…」と愕然とした。表明保証の厳しさ、コベナンツによる経営の制限、そして将来的な株式の希薄化や売却に関するVCの権利。まるで、会社の『魂』を売るような気分っす…」

俺は、これまで抱いてきた「俺が社長だから俺が全部決める!」という独裁的な考えが、いかに浅はかだったかを痛感した。第7回で学んだ「株主は誰か」、第8回で学んだ「取締役の善管注意義務」、そして第51回で学んだ「株主総会の意思決定」といった言葉が、まるで走馬灯のように頭を駆け巡る。会社は俺個人のものではなく、出資してくれた株主全員のものであり、俺はその成長を預かる責任者なのだ。

「まるで、会社の『魂』を売るような気分っす…」 俺の弱々しいつぶやきに、神崎さんは静かに答えた。 「資金調達は会社の成長を加速させる『燃料』です。しかし、その燃料を得るために、どのような『対価』を支払うか、あなたが決めることです。契約書に書かれていることは、VCが考える『理想の投資先』の姿です。しかし、それがビジラボの理想と完全に一致するとは限りません。あなたは経営者として、どこまでが譲れて、どこからが譲れない一線なのか、明確な線引きをする必要があります」

「でも、資金がなければ、サービスも成長しないし、ビジラボも潰れちまう…」

その時、横から斉藤が口を挟んだ。「社長、資金なしでは、せっかく開発したAIアシスタントも、絵に描いた餅ですよ。それに、従業員の給与も、オフィスの家賃も、資金がなければどうにもなりません。リスクは承知で、前に進むしか…」

斉藤の現実的な言葉が、俺の情熱をもう一度燃え上がらせる。そうだ、俺はビジラボを成長させるために、この起業家という道を選んだんだ。リスクを恐れて立ち止まるなんて、絶対にできない。

「俺は、ビジラボを成長させるために、どこまでリスクを取れるのか…!そして、どこまでならVCと交渉できるのか…!」

俺は、神崎さんの冷静なアドバイスと、斉藤の現実的な視点、そして田中が夜遅くまで開発に打ち込む姿を思い出した。この会社の未来は、俺の、たった一度のハンコにかかっている。俺は、もう二度と「どうせ細かいことだろ?」なんて馬鹿なことは言わない。この契約書の隅々まで理解し、納得した上で、会社の未来への決意を固めるんだ。

5. 最終交渉へ!一歩前進した青木とビジラボの夜明け

神崎さんの助言と、斉藤の現実的な意見をもとに、俺はVCとの最終交渉に臨むことを決意した。これまでVCから提示された条項一つ一つに対し、ビジラボにとって何が有利で不利なのか、神崎さんと共に徹底的に洗い出した。

「『優先清算権』は受け入れますが、その倍率はもう少し下げられませんか?」 「『コベナンツ』の財務制限条項ですが、売上目標達成時は一部解除していただく、という条件を追加できませんか?」 「『ストックオプション』の税制適格要件について、もう少し詳細な説明を求めます。従業員の利益を最大化できるよう、権利行使価格やベスティング期間を調整できないでしょうか?」

交渉の場では、以前の俺からは想像もできないほど、具体的な質問や提案をVCにぶつけることができた。VCの担当者は、当初は少し驚いた顔をしていたが、俺の真剣な態度と、論理に基づいた交渉に、最終的には納得してくれたようだ。

結果として、すべての要求が通ったわけではないが、当初の契約書からは大幅に改善された条件を引き出すことができた。例えば、コベナンツの一部緩和や、ストックオプションの税制適格要件を満たすための具体的な調整案などだ。

「青木さん、よくやりましたね。これで、ビジラボは新たな一歩を踏み出せます」 神崎さんの言葉に、俺は心底ホッとした。 「マジでヤバかったっす…これ、神崎さんに教わってなかったら、何も分からずハンコ押して、後でとんでもないことになってたかもしれねぇ…!」

今回の資金調達は、単なるお金の話ではなかった。それは、俺が経営者として、会社の未来をどうデザインしていくのか、その決意を問われる「大いなる試練」だった。そして、俺は、その試練から逃げずに、一歩前進することができた。ビジラボは、新たな『燃料』を得て、いよいよ未来の航海へと出発する。


2. 記事のまとめ

📚 今回の学び(神崎メンターの総括)

  • [学習ポイント1]: 投資契約は単なる出資合意ではなく、会社の増資、株式の種類(優先株式、拒否権付株式など)、ガバナンス、そして未来の事業展開に大きく影響する「会社の憲法」的な重要文書である。

  • [学習ポイント2]: VCとの投資契約には、「表明保証」「コベナンツ(財務制限条項など)」「優先清算権」「ドラッグアロング」といったVCに有利な条項が含まれることが多く、これらは経営の自由度や既存株主の権利を制限する可能性があるため、その内容を正確に理解し、交渉することが不可欠である。

  • [学習ポイント3]: 優秀な人材確保に不可欠な「ストックオプション」は、税制適格・非適格の違いで従業員の税負担が大きく変わるため、会社法、労働法、税法の知識を横断的に活用し、慎重な設計が求められる。

今週のリーガルマインド(神崎の教訓) 「資金調達は、あなたの会社の翼に『燃料』を注入する行為です。しかし、その契約は同時に、翼の『制御システム』と『航路』までも規定するものです。燃料を求めて、安易に操縦桿を手放してはなりません。細部まで理解し、納得した上で、未来の航海図を描くべきです。」

💭 青木の気づき(俺の学び)

  • 「金が手に入る!」って舞い上がってたけど、投資契約書ってこんなに会社の未来を縛るもんなのか…マジで驚いた。特に『表明保証』とか『コベナンツ』とか、知らずにサインしてたら、後でとんでもないことになってたかもしれねぇ。俺の情熱だけじゃどうにもならない、ロジックと知識の塊なんだって痛感した。
  • 『ストックオプション』も、単純にインセンティブだと思ってたけど、税制のこととか権利行使条件とか、従業員の未来にも直結するから、ちゃんと設計しないとダメなんだなって痛感した。会社の成長は、金だけじゃなくて、こうやってリスクとどう向き合い、未来をどう設計するかで決まるんだな。法務って、本当に経営の『要』だ…!

3. 次回予告

🔮 次回予告

VCとの交渉を乗り越え、ビジラボは資金調達の目処を立てた。苦労して得た大金と、新たな株主たち。俺は、この経験を通じて、法務が単なる「リスク管理」ではなく、「未来を創る戦略」そのものであることを肌で感じた。会社設立から始まったビジラボの法務奮闘記も、いよいよ最終回。俺は、神崎さんから「もう私のアドバイスは不要かもしれませんね」と笑われる日が来るのだろうか。いや、きっと、これからも法務との「戦い」は続いていく。

次回: 第66回(最終回) 社長の「成長」と「未来の法務」

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