開幕!いきなり「法源」でフリーズ。法律って法律だけじゃないの?

メンバー紹介

ここで学べる学習用語:法源、法律の分類(公法・私法・社会法)、民法、商法、会社法

第1回: 会社設立!…の前に。「法源」って何ですか?

「俺の会社だ!」と意気揚々とスタートアップ設立準備を進める青木健一。しかし、目の前に現れた敏腕弁護士・神崎凛から放たれた一言が、彼の世界を根底から覆す。「青木さん、会社を始めるなら、まず『法源』について理解する必要があります」。熱血社長の夢と現実がぶつかる、ビジネス法務奮闘記、ここに開幕!今回の学びを通して、あなたはビジネスの土台となる「ルールの源」を知り、法務トラブルを未然に防ぐ第一歩を踏み出すことになるだろう。


「俺の会社だ!」熱意と無知が生み出す、設立前の大混乱

「うおおお!いよいよ俺の会社、『ビジラボ』の設立だ!マジでワクワクするぜ!」

俺、青木健一は、東京・渋谷のインキュベーションオフィスの一室で、興奮冷めやらぬままにノートパソコンのキーボードを叩いていた。画面には「株式会社設立マニュアル」という胡散臭いタイトルのサイトと、ネットで拾ってきた雛形丸写しの定款作成フォーマット。頭の中には、すでに俺が開発中のSaaSサービス「タスクモンスター」(仮称)が世界を席巻し、年商100億を突破する未来が広がっている。

「まずは、会社名と住所、資本金と役員構成っと……ああ、全部俺一人だから楽勝だな!」

営業時代に培った猪突猛進の精神で、俺は登記に必要な書類を書き進めていく。細かいことは後回しだ。とにかく、早く「社長」になりたかった。

ピンポーン。

不意にドアベルが鳴り、俺は「はーい!」と声を上げた。現れたのは、隣のブースを使う斉藤さん……じゃなくて、今日からうちの会社に入ってくれることになった経理担当の斉藤恵さんだ。切れ長の目に涼やかな表情、物静かな雰囲気だけど、経理の知識は半端ないって聞いてる。

「社長、失礼します。斉藤恵です。書類、少し拝見してもよろしいでしょうか?」 「おお、斉藤さん!ちょうど良かった!今、定款作ってるとこ!ほら、これでバッチリだろ?」

俺は得意げに画面を向ける。斉藤さんは一瞬、その画面を見て眉をひそめた。

「社長、これは……。えっと、ネットの無料テンプレート、そのままですか?」 「おう!だってネットに落ちてんだから、これでいけんだろ?細かいこと気にすんなって!」

斉藤さんは小さくため息をついた。

「会社を設立する上で、定款は根幹となるルールブックです。テンプレートをそのまま使うのは、骨組みの家を建てるのに、基礎工事なしでいきなり屋根を載せるようなものです。危険すぎます」 「はあ?そんな大袈裟な。別に俺、誰かに迷惑かけるわけじゃねーし。俺一人でやるんだから、俺ルールでよくね?」 「……いえ、社長。たとえお一人で始められるとしても、会社という『法人』を設立する以上は、法的な枠組みの中で動くことになります。そこには、社長が思っている以上に多くの『ルール』が関わってくるんです」

斉藤さんの言葉に、俺は少しだけ冷や水を浴びせられたような気がした。ルール、ルールって、そんなに厳しく考えなきゃダメなのか?

その時、ドアが再び開いた。そこに立っていたのは、俺と同じインキュベーションオフィスに入居しているらしい、すらりとした長身の女性だった。黒のスーツをパリッと着こなし、知的な眼鏡の奥の瞳は、まるで全てを見透かすかのように鋭い。

「あら、斉藤さんもいらっしゃる。青木さん、ちょっといいですか?」

彼女の名前は神崎凛。このインキュベーションオフィスに常駐する弁護士で、時々、スタートアップの相談に乗っていると聞いている。美人で頭が良いのはわかるけど、なんだか近寄りがたい雰囲気なんだよな。

「あ、神崎さん。どうもっす」 「青木さん、先日少しお話ししましたよね?あなたの事業計画、とても興味深いです。ですが……会社設立の準備、拝見しました。少し認識が甘いように見受けられます」 「え、あ、はい。まだ途中なんで……」 「あなたが作ろうとしている『会社』というものは、法律によって定められた『法人』です。人が生きる上で守るべき社会のルールがあるように、会社が活動する上でも守るべきルールが膨大に存在します。そして、その『ルール』は、一見同じに見えて、その『源(みなもと)』や適用される範囲が全く異なる、ということをご存知でしょうか?」 「ル、ルール……っすか?いや、もちろん法律は守りますけど」 「その『法律』が、果たして一つだけだと考えていますか?会社設立にあたっては、会社法はもちろん、民法、商法、労働法、税法、さらには行政法規など、実に様々な『法律』が絡み合います。そして、その法律一つ一つにも、それぞれ異なる『源』があるんです。青木さん、あなたは『法源』という言葉をご存知ですか?」

「法源」――。初めて聞く言葉だった。俺の頭の中は、「??」でいっぱいになった。法律って、国が作るもんじゃないのか?何だ、その「源」ってやつは? 俺は、まるで深海に引きずり込まれるかのように、その言葉にフリーズしてしまった。目の前には、まだ見ぬ法律の海の底が広がっているような、そんな絶望感を覚えた。

メンター降臨!「致命的」な無知を突きつけられた青木の運命は?

「法源、ですか……?いや、すいません、初めて聞きました……」

俺が正直に答えると、神崎さんは大きくため息をついた。その視線は、まるで出来の悪い生徒を見る先生のようだ。隣の斉藤さんは、困ったような顔で俺と神崎さんの顔を見比べた。

「青木さん、その認識は『致命的』です。ビジネスを始める上で、法的なリスク管理は必須。特にスタートアップは、限られたリソースの中で、いかに効率的に、そして致命傷を負わずに事業を進めるかが鍵です。ルールを知らないということは、見えない地雷原を突っ走るようなものですよ」

神崎さんの言葉は、俺の胸に突き刺さった。営業では「勢いが命!」とばかりに突っ走ってきたけれど、法の世界ではそれが通用しないどころか、破滅を招くらしい。

「でも、法律って、難しい漢字がいっぱいで、どれがどれだか……」 「そうですね。だからこそ、その『ルール』がどこから来ているのか、全体像を理解することが重要なんです。法律は、ただの暗記科目ではありません。ビジネス上の問題を解決し、リスクを回避するための『知恵』なんです」

神崎さんは、俺の前に立ったホワイトボードに、サラサラと文字を書き始めた。

「まず、法律と一口に言っても、その『源(みなもと)』は多岐にわたります。これを法学では『法源(ほうげん)』と呼びます」

彼女はそう言いながら、「法源」という言葉を大きく囲んだ。そして、そこから枝分かれするように、いくつかの言葉を書き加えていく。

「法源というのは、簡単に言えば『法律の源(みなもと)』、つまりルールの“出どころ”のことです。私たちがビジネスをする上で守るべきルールは、国会が作った『法律』だけではありません。内閣が作る『政令』、裁判所が示す『判例』、さらには慣習や条例……これら全てが『法源』となります」

俺は必死にメモを取る。法律、政令、判例、慣習、条例……。今まで「法律」と一括りにしていたものが、こんなにも細かく分かれているのか。

「そして、これらの法源によって作られたルールは、大きく三つのカテゴリに分けられます。それが、『公法(こうほう)』、『私法(しほう)』、そして『社会法(しゃかいほう)』です」

神崎さんは、さらにホワイトボードに図を書き足した。公法、私法、社会法。聞いたことはあるような、ないような……。

「青木さん、あなたのビジネスは、どの法律の分類に最も深く関わってくると思いますか?」 「えっと……会社とか、契約とか……だから、民法とか商法、会社法とか?」 「良い疑問ですね。では、それぞれの分類が、具体的にどのような『関係性』を規律するルールなのかを、これから説明していきましょう」

俺は、神崎さんの言葉に息をのんだ。まさに、知らない世界への扉が開かれようとしている。

神崎の法務レクチャー:ビジネスを動かす「法の源」と「分類」の羅針盤

【神崎の法務レクチャー】

「青木さん、今のあなたの疑問、『民法や商法、会社法』がビジネスに重要だという認識は、まさにその通りです。ただ、それらがなぜ重要なのか、その『源』を理解することが、応用力を養う第一歩となります」

神崎さんは、ホワイトボードに書いた「法源」の図を指し示した。

「先ほどお話ししたように、『法源』は多様です。日本の法体系においては、最も上位に『憲法』があります。これは、国家の最高法規であり、国民の権利義務の根本を定めます。しかし、ビジネスの実務で憲法を直接適用する場面は稀です。では、どこから具体的なルールが生まれるのか。それが、皆さんが最も馴染み深いであろう『法律』です」

神崎さんは「法律」という言葉を強く言い、その下に「国会」と書き加えた。

「この『法律』は、国会で制定されます。民法や商法、会社法、労働基準法、刑法……皆さんが『法律』と聞いてイメージするもののほとんどがこれにあたります。そして、法律が具体的な内容を定めるために、内閣が『政令(せいれい)』『省令(しょうれい)』を制定します。これらは、法律の委任に基づいて、より詳細な規定を設けるものです。例えば、ある法律で『〜は政令で定める』と書かれていれば、その具体的な内容は政令に書かれている、というわけです」

俺は「へぇー」と感心した。法律の下に、さらに細かいルールがあるのか。

「さらに、ビジネスにおいては、過去の裁判の判断である『判例(はんれい)』も、実質的な法源として非常に重要です。判例法主義の国、例えばイギリスなどとは異なりますが、日本の裁判所は過去の最高裁判所の判例を強く意識して判断します。特に、新しいビジネスモデルや技術に関する紛争では、既存の法律だけでは解決できないことも多いため、判例が新たなルールの指針となることがあります」

【神崎の補足解説】法源(ほうげん)とは?

法律やルールがどこから生まれてくるのか、その「源泉」のこと。日本では主に、憲法、国会が制定する「法律」、内閣が制定する「政令・省令」、地方公共団体が制定する「条例」、そして過去の裁判例である「判例」や「慣習法」などが挙げられます。スタートアップが事業活動を行う上では、これらの法源が複合的に絡み合い、ビジネスの成否を左右することになるため、その全体像を理解することが非常に重要です。特に、国会が制定する「法律」だけでなく、内閣の「政令」や裁判所の「判例」も「ルール」の一部として意識しなければ、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

「次に、これらの法源によって作られたルールが、どのような関係性を規律しているのか、その『法律の分類』について見ていきましょう。大きく分けて『公法』、『私法』、『社会法』の三つです」

神崎さんは、ホワイトボードに分類図を改めて示し、それぞれを指差しながら説明を始めた。

「まず、『公法(こうほう)』です。これは、国家と国民、あるいは国家機関同士の関係を規律する法律を指します。例えば、国家が税金を徴収したり、警察が犯罪を取り締まったり、行政が許認可を与えたりといった、上下の関係におけるルールです。憲法、行政法、刑法、訴訟法などがこれにあたります。青木さんの会社が法人税を納めるのも、行政から許認可を得るのも、公法の領域です。もし、法律違反で逮捕されるような事態になれば、それは刑法の問題。つまり、国家という『公権力』が介入してくるルール、とイメージしてください」

「なるほど……だから、公僕とか、公共とかの『公』ってことっすね!」 「その通りです。そして、青木さんのビジネスにおいて、より日常的に、かつ直接的に関わってくるのが『私法(しほう)』です」

神崎さんは、今度は「私法」の文字を強調した。

「私法は、私人(個人や法人)同士の関係を規律する法律です。つまり、対等な立場の当事者間の自由な活動を保障し、その間に生じる紛争を解決するためのルールです。代表的なのは『民法(みんぽう)』です」

俺は「民法」という言葉に身構えた。ドラマとかでよく聞くやつだ。

「民法は、財産や家族に関する法律で、契約、相続、不法行為など、私たちの日常生活やビジネスの根幹を規律しています。例えば、あなたがオフィスを借りたり、PCを購入したり、社員を雇ったりする際の契約は、基本的に民法がベースとなります。そして、スタートアップである『ビジラボ』が法人として活動していく上で、この民法を補完し、ビジネスに特化したルールを定めているのが『商法(しょうほう)』です」

【神崎の補足解説】民法(みんぽう)とは?

私人(個人や法人)間の財産関係や家族関係を規律する法律の基本法。売買、賃貸借、雇用といった日常的な契約のルールから、不法行為(他人に損害を与えた場合の責任)まで、ビジネスのあらゆる側面で根幹をなします。スタートアップ経営者にとっては、「契約の基本」「他者への責任の範囲」を理解する上で、最も重要な法律の一つです。

「商法は、商人(ビジネスをする人や会社)の活動全般に適用される、民法の特別法です。商売上の契約には、民法とは異なる特別なルールがあるんです。例えば、商人が売買契約を結んだ場合、代金を支払わないと高い利率の遅延損害金が発生するとか、商人間では一定期間内に商品の欠陥を通知しないと責任を追及できない、といったようなルールです。これは、スピーディな取引が求められるビジネスの世界の特殊性を反映しています」

「へえ、商人には商人のルールがあるのか……!」

「そして、青木さんの『ビジラボ』という『会社』の設立、運営、そして終わり方を規律する、最も重要な法律の一つが『会社法(かいしゃほう)』です。会社法は、民法と商法から枝分かれし、特に『法人』としての会社の活動に特化したルールを定めています。例えば、株式会社を設立する際の手続き、株主総会の開催方法、取締役の責任、資本金のルールなど、会社の根幹に関わる全てが会社法で定められています」

【神崎の補足解説】商法(しょうほう)とは?

「商人」(会社を含む)の営業活動や商取引に特化した法律。民法の特別法として機能し、より迅速で効率的な商取引を可能にするためのルールを定めています。スタートアップが事業を行う上で、一般的な民事契約との違いや、「商人としての責任」を理解するために不可欠です。

【神崎の補足解説】会社法(かいしゃほう)とは?

株式会社、合同会社といった「会社」という法人の設立、運営、組織変更、解散など、あらゆる側面を規律する法律。スタートアップにとっては、「会社の設立から成長、そして将来的なM&Aや上場まで」、その形態を規定し、経営者の権利義務、株主との関係、ガバナンスのあり方を定める、最も基本的な法律です。

「最後に、『社会法(しゃかいほう)』です。これは、公法と私法の性質を併せ持つ、比較的新しい法律分野です。資本主義経済の発展に伴い、労働者や消費者といった、経済的に弱い立場の人々を保護するために作られました。例えば、『労働法(ろうどうほう)』や『消費者契約法』などがこれにあたります。青木さんの会社がこれから従業員を雇うことになれば、労働契約は私法上の契約ですが、そこに労働基準法といった社会法のルールが強く介入し、雇用主(会社)が一方的に有利になることを防ぎます」

「労働法!それも大事そうですね!」 「ええ、非常に重要です。スタートアップでよくあるのが、『社員は家族同然だから』と、つい労働法を軽視してしまうケース。しかし、法律上は使用者と労働者は対等ではありません。労働者を保護する社会法の視点を常に持つことが、大きなトラブルを避ける上で不可欠です」

神崎さんは、ホワイトボードを振り返り、全体図を改めて見せた。

「どうですか、青木さん。法律と一口に言っても、その『源』が様々であり、規律する関係性によって『公法』『私法』『社会法』に分かれることが理解できたでしょうか?ビジネスにおける問題は、これら複数の法律分野が絡み合って生じることがほとんどです。だからこそ、特定の『法律』の条文だけを丸暗記するのではなく、この『法源』と『分類』という全体像を理解することが、法務トラブルを未然に防ぎ、適切な対応を取るための基盤となるのです」

俺は、今まで法律をただの「お堅いルール」だと思っていた自分を恥じた。これは、まるでゲームの「世界観設定」を知るようなものだ。この世界の「物理法則」や「キャラクター間の関係性」を理解しないと、まともにプレイできないのと同じ。

神崎さんの言葉は、俺の頭の中に新たな地図を描いてくれたようだった。漠然とした「法律」という霧が晴れ、その向こうに広がる広大なフィールドが、少しだけ見えた気がした。

「ルールは俺たちを守る盾」無知を乗り越え、経営者としての一歩を踏み出す青木

「神崎さん……すげぇっす。俺、今までマジで法律を舐めてました」

神崎さんの丁寧な解説を聞き、俺は完全に打ちのめされたと同時に、目から鱗が落ちるような感覚を覚えた。

「『法律って国が作るもん、俺には関係ないっしょ』って思ってた自分が恥ずかしいです。要は、法律って、ただの『ルール』じゃなくて、俺たちがビジネスをやる上で、どこからそのルールが来てて、誰と誰の関係性を定めてるのか、ってことっすよね?」 「まさにその通りです、青木さん。法律は、ただの『お仕置き』ではありません。むしろ、公正な競争を促し、弱い立場の人々を保護し、そしてあなたのビジネスそのものを守るための『盾』でもあるんです。あなたがどのような契約を結ぶか、どのようなサービスを顧客に提供するか、どのような人を雇うか。その全てにおいて、これらの『法源』と『法律の分類』の視点が、適切な判断を下すための羅針盤となります」

俺は、ホワイトボードに書かれた「公法」「私法」「社会法」の文字を見つめた。 今まで「法律」と聞くと、刑務所とか、裁判沙汰とか、ネガティブなイメージしかなかった。でも、神崎さんの話を聞いて、それは単に無知だっただけだと気づいた。

「俺は、俺のサービスで世界を変えたいって本気で思ってます。そのためには、法律って、リスクを避けるだけじゃなくて、むしろ俺たちのビジネスを強くするための『土台』なんだって、今日ハッキリわかりました」

俺の言葉に、斉藤さんが少しだけ微笑んだ気がした。神崎さんは、いつものように冷静な表情を崩さない。

「その認識を持てたなら、今日この時間を割いた甲斐がありますね。スタートアップはスピードが命ですが、そのスピードを支えるのは、しっかりとした『足元』、つまり法務という基盤です。焦らず、一歩ずつ学んでいきましょう」

俺は深呼吸をした。まだ会社は設立前だ。今日、「法源」という言葉に出会えたのは、むしろ幸運だったのかもしれない。無知のまま突っ走っていたら、本当に「致命的」なミスを犯していたかもしれないのだ。

「マジでヤバい、全然わかんねぇことだらけっすけど……でも、やるしかねぇっす!神崎さん、斉藤さん、これからもご指導よろしくお願いします!」

俺は立ち上がり、神崎さんと斉藤さんに向かって頭を下げた。目の前に広がる法務の荒野は果てしなく、不安も大きい。しかし、この二人と共に、この困難を乗り越えていける。そんな確かな手応えを感じていた。

一枚の紙から始まる、俺たちの法務奮闘記

神崎さんと斉藤さんがオフィスを出た後、俺は再びノートパソコンの画面に向き合った。目の前には、ネットから拾ってきた定款の雛形。さっきまで「これでバッチリ」だと思っていたその紙切れが、今はまるで、何が書いてあるかもわからない古代の暗号文のように思える。

「憲法……法律……政令、判例……公法、私法、社会法……」

俺は、神崎さんがホワイトボードに残していった文字を、ノートに書き写す。会社の名前を決めること一つとっても、商号のルールや商標権が関わってくるんだろう。資本金をいくらにするか、役員をどうするか……きっと、会社法の深い知識が必要になるはずだ。

たった一枚の「定款」という紙から、こんなにも広大な法律の世界が繋がっているなんて、想像もしていなかった。

「うおおお、マジで奥が深いぜ、法律の世界!でも、これは……俺たちのビジネスを守るための『知恵』なんだ。よし、絶対全部理解してやる!」

俺は新たな決意を胸に、キーボードの前に座り直した。熱意だけでは世界は変えられない。しかし、知恵と戦略が加われば、きっとその夢は現実になるはずだ。俺たちの『ビジラボ法務奮闘記』は、まだ始まったばかりだ。


2. 記事のまとめ (Summary & Review)

📚 今回の学び(神崎メンターの総括)

  • 【学習ポイント1】: ビジネスの「ルール」は多岐にわたる「法源」から生まれる。国会が作る「法律」だけでなく、「政令」「判例」「条例」「慣習」も法源として重要。

  • 【学習ポイント2】: 法律は、規律する関係性によって「公法(国家と個人・国家機関)」「私法(個人・法人同士)」「社会法(社会的弱者保護)」に分類され、ビジネスの場面ごとに異なる分類の法律が適用される。

  • 【学習ポイント3】: 「民法」は私人間の基本ルール、「商法」はビジネス特化ルール、「会社法」は会社の設立・運営ルールであり、これらは私法・社会法の代表としてスタートアップ経営に不可欠な基盤となる。

今週のリーガルマインド(神崎の教訓) 「法律を知らないことは、地図もコンパスも持たずに嵐の海へ出航するのと同じです。あなたの情熱という『船』を沈めないために、私たちは『法』という航海術を学ぶのです」

💭 青木の気づき(俺の学び)

  • 「法律って、ただの『お堅いルール』じゃなくて、俺たちのビジネスを守るための『盾』なんだって初めて知った。リスクを避けるだけじゃなく、会社を強くする土台になるって、これからの経営視点に絶対必要だ!」
  • 「『法源』とか『公法・私法・社会法』とか、最初は全然意味わかんなかったけど、これってゲームの『世界観設定』と同じで、これを理解しないとゲーム(ビジネス)をクリアできないってことなんだな。これから、もっと深掘りしていくぞ!」

3. 次回予告 (Next Episode)

🔮 次回予告

無事に会社設立の方向性が見えた俺は、早速インキュベーションオフィスの契約書にサインしようとしていた。ところが、その契約書を読んだ斉藤さんが「社長、この『紛争解決条項』、ちょっと気になります……」と顔色を変える。大家さんとのちょっとした揉め事が、まさか「裁判」に発展するなんて!? 「裁判なんて、俺には関係ないだろ!」と叫ぶ俺に、神崎さんは冷ややかにこう言った……。

次回: 第2回 揉めたらどうする? 「裁判所」と「ADR」

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