「冗談でした(笑)」は通用する?「心裡留保」と「錯誤」の迷宮

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ここで学べる学習用語:心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤


第17回: 「冗談でした(笑)」は通用する?「心裡留保」と「錯誤」の迷宮

前回、俺は神崎さんから「口約束も契約になる」という恐ろしい事実を叩き込まれた。営業時代の俺なら「口頭でも『やります!』って言ったら契約だろ?」と胸を張っていたかもしれない。だが、今は違う。ビジラボという会社を背負っている以上、安易な発言がどれほどの重みを持つか、少しは分かってきたつもりだ。

そんな俺を襲ったのは、まさかの「夢」だった。


真夜中の訪問者と冷や汗の予兆

「うわああああああ!」

俺は飛び起きた。全身が冷や汗でぐっしょり濡れている。真っ暗な部屋で心臓がバクバクと鳴り響き、まるで全力疾走した後のようだ。息を整えながら、先ほどの夢の内容を必死に思い出そうとする。

夢の中の俺は、とある取引先の社長と、深夜の居酒屋で泥酔していた。

「いやぁ、青木さん。ビジラボさんのサービス、マジで最高だよ!うちも使いたい!これ、来月から契約ってことで、マジでお願いね!」 「へへへ、ありがとうございます!ぜひぜひ!じゃあ、来月からで、マジでやっちゃいましょう!」

そんなやり取りをしていた。俺は得意満面でその言葉を受け止め、ガッチリと握手を交わした。その時は、「やった!大口契約だ!」と浮かれていたんだ。

しかし、数日後、現実の取引先社長から一本の電話がかかってきた。 「いやぁ、青木さん。この前は飲み過ぎちゃってね。来月から契約なんて話、冗談に決まってるじゃないですか!お互い、酔っ払いのたわごとってことで、勘弁してくださいよ、はっはっは!」

俺は青ざめた。「冗談?」と聞き返す俺に、社長は「そりゃそうでしょう。あんな場で本気の契約なんてありえないでしょう?青木さんも分かってるでしょ?」と笑い飛ばした。

「そ、そんな…!でも、確かに契約すると…」 「ええ?いやいや、僕も青木さんも、そんなつもりじゃなかったでしょ?本気で契約するなら、ちゃんとした書類交わしますよねぇ?まさか青木さん、あの時の話を本気にしてるとか…?」

夢の中の俺は、そこで完全にフリーズした。冷や汗が背中を伝う。「冗談」という言葉の刃が、俺の胸に突き刺さるような感覚。次の瞬間、俺はベッドから飛び起きていたというわけだ。

「はぁ…はぁ…夢でよかった…」

安堵の息をつきながらも、俺の心臓はまだ落ち着かない。 もし、あの夢が現実だったら?「冗談」という一言で、積み上げてきた努力が水の泡になるなんて、営業マン時代なら考えもしなかった。でも、今の俺はビジラボの社長だ。たった一言が、会社の命運を左右することもある。神崎さんの「口約束も契約になる」という言葉が、頭の中でリフレインする。

翌朝、俺は出社するなり、神崎さんのデスクに突撃した。

「神崎さん!ちょっと相談があるんすけど!」 「あら、青木さん。顔色が悪いですね。何かあったんですか?」

斉藤さんも心配そうな顔で俺を見た。

「あのですね、もし、取引先が契約の話を『冗談だった』って言ってきたら、どうなるんすか!?俺は本気だったのに!」

俺は夢の内容を神崎さんと斉藤さんに、早口でまくしたてた。二人は互いに顔を見合わせ、やれやれといった表情を浮かべる。

斉藤さんが溜息まじりに言う。 「社長…また何かやらかしたんですか?冗談だったなんて、そんな馬鹿な話…」

神崎さんは冷静な表情で俺の目を見据えた。 「青木さん、それ、法律の世界では『意思表示の瑕疵(かし)』という、少し厄介な問題に分類される可能性がありますね。あなたの言う『冗談』や『勘違い』が、契約を無効にしたり、取り消したりする力を持つこともあります」

「意思表示の瑕疵…?無効?取り消し?なんすかそれ、また新しい呪文ですか!?」

頭の中が真っ白になる。契約が「無効」や「取り消し」になるなんて、青天の霹靂だった。俺は前回の学びで、契約は成立したら絶対だ、くらいに思っていたのだ。

法律の落とし穴?「冗談」「勘違い」の境界線

神崎さんは俺の混乱した様子を気にも留めず、淡々と説明を続ける。 「青木さん、私たちがある会社と契約を結ぶとき、そこには『契約を結びたい』という『意思』と、その意思を『契約書』や『口頭』で表明する『表示』がありますよね。これまでの話は、この『意思』と『表示』が一致していることが前提でした」

「ええ、まあ。それが当たり前でしょ?」

「そうですね。ですが、この『意思』と『表示』が一致しない場合や、意思形成の過程に問題があった場合、契約が成立しても、その効力が否定されることがあります。それが『意思表示の瑕疵』と呼ばれるものです」

「へぇー…って、俺の夢の話、まさにそれじゃないっすか!俺は契約したい意思があったけど、相手は『冗談』って表示したわけじゃないですか!」

俺が興奮気味に言うと、神崎さんは首を横に振った。

「いえ、青木さん。あなたの夢のケースは、相手が『冗談の意思』を持って『契約の表示』をした。つまり、相手の『意思』と『表示』が不一致だった、と解釈できます。これを法的には『心裡留保(しんりりゅうほ)』と言います」

「しんりりゅうほ?」

「ええ。そして、もしその『冗談』が、相手とグルになって仕組んだ嘘の契約、つまり『通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)』だったら、また話は変わってきます。さらに、あなたが『勘違い』で契約を結んでしまった場合は『錯誤(さくご)』という別の問題になります」

神崎さんの口から次々と飛び出す聞き慣れない言葉に、俺の頭は完全にフリーズした。心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤…。まるで、契約という迷宮に足を踏み入れてしまったような感覚だ。

「待って待って、神崎さん!全部『嘘』とか『勘違い』ってことっすよね?何でそんなに種類があるんすか?俺、もう頭がパンクしそうっす…!」

斉藤さんも心配そうな顔で俺を見ている。 「社長、落ち着いてください。でも確かに、そんなに細かく分類されていると、私たちには理解が難しいですね」

神崎さんは静かに頷き、俺たちに語りかけた。 「大丈夫です、青木さん。一つずつ、なぜこれらが法律で厳しく区別されているのか、そしてビジラボにとって何が重要なのかを、これから丁寧に解説しましょう」

神崎の法務レクチャー:契約を揺るがす「意思の欠陥」

神崎さんの静かな声が、オフィスに響き渡った。彼女はホワイトボードに三つの専門用語を書き出し、その横にそれぞれの意味を簡単に書き添えていく。

「青木さん、斉藤さん。契約は、当事者同士の『意思』の合致によって成立するというのが大原則です。しかし、人間ですから、時には『本心とは違うことを言ってしまったり』、『勘違いしてしまったり』することがあります。法律は、そうした人間の心の機微にまで目を向け、契約の公平性を保とうとするのです」

「へえ、そこまで…」俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

【神崎の法務レクチャー】

「まず、『心裡留保(しんりりゅうほ)』から説明しましょう。これは、簡単に言えば『冗談』や『嘘の意思表示』のことです」

神崎さんはペンをホワイトボードに向けた。

「例えば、青木さんが営業で『うちのサービス、今だけ月額100万円で提供します!』と言ったとします。内心では『冗談だよ、まさかそんな大金払うわけないだろ』と思っていても、相手が本気にして『じゃあ、契約します!』と言ってきたらどうなるでしょうか?」

「え、それは…俺は冗談だったって言いますけど…」

「そうですね。ですが、法律の世界では、原則として、その『月額100万円の契約』は有効になります」

「ええっ!?マジっすか!?俺、冗談だって言ったのに!」俺は思わず声を上げた。

「はい。これが心裡留保の原則です。なぜなら、契約は『表示された意思』に基づいて行われるべきだからです。相手から見れば、あなたが本気でそう言ったとしか思えませんよね?もし、心裡留保を理由に簡単に契約を無効にできるとしたら、誰も安心して契約できなくなってしまいます」

「うぐ…た、確かに…」

「ですが、例外があります。相手が、あなたが『冗談』や『嘘』を言っていることを『知っていた』場合、あるいは『知ることができた』場合には、その意思表示は無効になります」

【神崎の補足解説】心裡留保(しんりりゅうほ)とは?

心裡留保とは、意思表示をする人が、自分の真意ではないことを知りながら、あえてその意思表示をすること。たとえば、「冗談」で「物を売る」と言ったり、「買わないつもり」なのに「買う」と言うようなケースを指します。

  • 原則: 表示された意思(言動)は有効。相手から見て本気としか思えない場合、契約は有効に成立します。
  • 例外: 相手が、その意思表示が「冗談」であることを知っていた(悪意)、または知ることができた(善意有過失)場合は無効となります。
    • ビジラボ(スタートアップ)において: 軽率な発言や交渉時の「リップサービス」が、相手によっては本気の意思表示とみなされ、意図せぬ契約を成立させてしまうリスクがあります。特に、口頭での合意が多いスタートアップでは注意が必要です。

「つまり、俺の夢のケースは、相手が『本気にしてるわけないだろ』と思ってたから、無効になる可能性があるってことっすか?」

「その通りです。ただ、相手が『知ることができた』かどうか、という点は裁判で争われることも多く、立証は容易ではありません。だからこそ、軽はずみな発言は控えるべきなのです」

俺は青い顔で頷いた。冗談が冗談でなくなるなんて、恐ろしい世界だ。

「次に、『通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)』です。これは心裡留保と似ていますが、決定的に違う点があります。それは、『相手と通じ合っている』という点です」

「通じ合ってる…?グルってことっすか?」田中が素朴な疑問を投げかけた。

「まさにその通りです、田中さん。例えば、青木さんが借金返済を免れるために、自分の大切なサーバーを、友人である斉藤さんに『売ったこと』にして、形式上名義だけ移すとします。でも、実際には売るつもりも買うつもりもなく、二人で『売買契約をしたフリ』をする。これが通謀虚偽表示です」

「ははーん、なるほど。つまり、俺と斉藤さんの間で『形だけ』の契約をするってことっすね」

「その通りです。このような通謀虚偽表示による契約は、原則として常に無効となります。最初から、両者に真の契約意思がないと分かっているわけですからね」

【神崎の補足解説】通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)とは?

通謀虚偽表示とは、相手方と通謀して(共謀して)、虚偽の意思表示をすること。双方に真の意思がないにもかかわらず、表面上、特定の契約が成立したかのように見せかける行為を指します。

  • 原則: 当事者間では常に無効。真の意思がないことが明らかであるためです。
  • 例外: 善意の第三者に対しては無効を主張できません。たとえば、上記の例で「売ったこと」にしたサーバーを、事情を知らない第三者が斉藤さんから買い取ってしまった場合、青木さんは第三者に対して「あれは無効だった」と主張することはできません。善意の第三者を保護するためです。
    • ビジラボ(スタートアップ)において: 資金調達の際に投資家を欺くため、あるいは税金対策のために架空の契約や名義貸しを行うなどの誘惑に駆られることがあるかもしれませんが、これは後に重大な法的責任を問われるだけでなく、最悪の場合、会社自体が信用を失い、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。

「なるほど、じゃあ通謀虚偽表示は、悪いことしようとしてるから、基本無効になるってことっすね!でも、第三者っていうのが厄介だな…」

「そうですね。善意の第三者の保護は、契約の安定性を保つために非常に重要な原則です。そして最後に、『錯誤(さくご)』です。これが一番、青木さんの言う『勘違い』に近いかもしれません」

「おお!俺の勘違いが救われる日が来た!」

「そう単純ではありませんよ、青木さん。錯誤とは、意思表示をした人が、自分の意思と表示が食い違っていることに、自分で気づいていない状態を言います。あるいは、契約の動機となった事柄について、重大な勘違いをしていた場合も含みます」

「むむ…自分で気づいてない…?」

「はい。例えば、斉藤さんが『このPC、最新モデルの新品ですね!』と信じて、中古の旧モデルPCを青木さんから買ったとします。斉藤さんは『最新モデルの新品を買う』という意思を持って『買う』と表示しました。しかし、実際に手に入れたのは『中古の旧モデルPC』。彼女の意思(最新新品が欲しい)と、表示(このPCを買う)の前提に、大きなズレがありますよね」

斉藤さんが「それは困ります!」と顔をしかめた。

「また、動機の錯誤、というものもあります。例えば、青木さんが『この土地は将来、駅ができるから必ず値上がりする!』と思い込んで、実際には駅の計画など全くない土地を、高値で買ってしまったとします。この場合、青木さんは『駅ができる』という動機に基づいて『土地を買う』という意思表示をしました。この『駅ができる』という動機が勘違いだった、というケースです」

「あー、それ、ありがちっすね。営業トークでよく使われ…いや、なんでもないっす!」俺は慌てて口を閉じた。

「以前の民法では、錯誤は原則として『無効』でした。しかし、2020年の民法改正で『取り消し』に変更され、より柔軟な対応が可能になりました」

【神崎の補足解説】錯誤(さくご)とは?

錯誤とは、意思表示をする人が、その意思表示の前提となる重要な事実や、意思表示の内容自体について勘違いをしている状態を指します。

  • 原則: 一定の要件を満たせば取り消しが可能。

    • 要件1(表示の錯誤): 意思表示の内容の重要な部分について錯誤があること。例:「100万円」と書くつもりが「10万円」と書いてしまった。
    • 要件2(動機の錯誤): 契約の動機となった事実(例: 「この土地に駅ができる」)に錯誤があり、その動機が相手に表示されていたこと。
    • 要件3: その錯誤が、一般的な人でも同じように勘違いするような「重要性」を帯びており、かつ意思表示をした人に「重過失がない」こと。
  • 無効との違い: 「無効」は最初から法律効果が生じなかったものとして扱われるのに対し、「取り消し」は一度成立した法律効果を遡って消滅させるものです。取り消しには、意思表示した人からの能動的なアクションが必要です。

    • ビジラボ(スタートアップ)において: 契約締結時に、前提となる事実認識に大きな勘違いがないか、契約書の内容を誤解していないか、慎重に確認する必要があります。特に、相手からの説明を鵜呑みにせず、重要事項は必ず書面で確認することがトラブル回避に繋がります。

「なるほど…。『心裡留保』は冗談と分かってるけど言っちゃったパターン。相手が知ってたら無効。知らなかったら有効。で、『通謀虚偽表示』は二人でグルになって嘘の契約をしたパターンで、これは常に無効。そして『錯誤』は、勘違いしちゃったパターンで、取り消しができる、ってことっすね?」

俺は必死に頭の中を整理しながら、神崎さんの顔を見上げた。

「その理解で概ね合っています、青木さん。それぞれ、契約の効力(有効、無効、取り消し)が異なり、効果も大きく違います。特に『無効』と『取り消し』は似ているようで、法的な意味合いが全く異なります」

「無効と取り消し…どう違うんすか?」

田中がまた質問を挟んだ。

「無効は、その契約が『最初からなかったこと』になります。誰も、その契約の有効性を主張できません。一方、取り消しは、一度は有効に成立した契約を、後から『取り消します』と主張することで、遡って無効にする、という行為です」

「つまり、無効は自動的にアウト、取り消しは自分でアウトって宣言しないといけないってことっすか?」

「わかりやすい例えですね、青木さん。その通りです。錯誤による取り消しは、その『勘違い』をした本人が主張しないと、契約は有効なまま進行してしまいます。そして、取り消しができる期間も法律で定められていますから、いつまでも主張できるわけではありません」

「うわあああ…契約って、こんなに複雑なんすね…。俺、営業マン時代、ノリと勢いで契約してたこと多々あった気がするんすけど…マジで危なかったんすね」

俺は全身からゾッと鳥肌が立つ感覚を覚えた。自分の軽率な行動が、会社の命取りになりかねなかったという事実に、改めて身震いした。

気づきと決意:言葉の重みと契約の深淵

神崎さんの解説は、俺にとって目から鱗が落ちるような体験だった。 「心裡留保」「通謀虚偽表示」「錯誤」。たかが「冗談」や「勘違い」が、ここまで厳密に法律で定義され、契約の効力に影響を与えるなんて、想像もしていなかった。特に「心裡留保」の原則有効という話には肝を冷やした。俺の営業時代の「リップサービス」の数々が、もし本気で受け取られていたらと思うと、胃がキリキリと痛む。

「つまり、神崎さん。俺が取引先と話すとき、相手に『冗談だろ?』って思われるようなことを言っちゃダメってことっすか?いや、逆か。俺が本気で契約したいときは、相手に絶対に『冗談じゃないっすよ!本気っす!』って伝える必要があるってことっすか?」

俺は自分の理解を確かめるように問いかけた。

神崎さんは穏やかに頷いた。 「ええ、青木さん。その通りです。あなたの意思表示が、相手にどのように受け取られるか、その点を常に意識することが重要です。特に重要な契約では、口頭だけでなく、書面で明確に意思表示を行い、互いの真意を明文化することが、トラブルを未然に防ぐ最も確実な方法です」

斉藤さんが俺に言った。 「社長、だから契約書なんです。曖昧な言葉じゃなくて、具体的な数字と条件で、お互いの意思を明確にする。それが一番、後の揉め事を防ぐんです」

「はぁ…そうか。契約書って、単にルールを書いてるだけじゃなくて、お互いの『意思』を明確にするためのものだったんすね…。今まで、なんであんなに面倒くさがってたんだろ、俺…」

俺は深く反省した。契約書をないがしろにしていた自分を恥じる。言葉の持つ重み、そして契約の深遠さに、改めて向き合う必要性を痛感した。

「神崎さん、ありがとうございます。俺、今日から、いや、もう今この瞬間から、口にする言葉、交わす契約、全てに責任を持って臨みます!」

「それは素晴らしい決意ですね、青木さん。それが経営者として、そしてビジネスパーソンとしての成長の第一歩です」

神崎さんの言葉に、俺の胸に熱いものがこみ上げてきた。

危機管理意識の覚醒、そして未来へ

今回の学びは、単に法律用語を知っただけではない。俺は、自分の「言葉」が持つ力と、それがビジネスにおいてどれほどのリスクとチャンスを秘めているか、その深淵を垣間見た気がする。

幸い、夢の中の取引先とのトラブルは現実ではなかった。しかし、いつ同じような状況に陥るかは分からない。これからは、たとえ小さな口約束であっても、「冗談」や「勘違い」で済まされないことを肝に銘じ、一つ一つの意思表示に細心の注意を払っていこう。そして、重要な取引では、必ず神崎さんと斉藤さんと連携し、明確な書面で契約を結ぶことを徹底する。

「よし!契約書、ちゃんと読むぞ!そして、もし相手が『冗談だった』なんて言ってきたら…俺は絶対に許さねぇ!ビジラボを守るために、法務、マジでやるしかねぇ!」

俺は改めて、経営者としての覚悟を胸に刻んだ。契約は、ただの書類ではない。それは、会社と未来を繋ぐ、言葉の結晶なのだ。


2. 記事のまとめ (Summary & Review)

📚 今回の学び(神崎メンターの総括)

  • [学習ポイント1]: 「心裡留保」とは、内心の意思と異なる意思表示をすること。相手が善意無過失であれば原則有効となり、意図せぬ契約が成立するリスクがある。

  • [学習ポイント2]: 「通謀虚偽表示」とは、相手と共謀して真意でない意思表示をすること。当事者間では常に無効となるが、善意の第三者には対抗できない。

  • [学習ポイント3]: 「錯誤」とは、意思表示の内容や動機に勘違いがあること。民法改正により、一定の要件を満たせば契約を取り消すことが可能となった。

  • [学習ポイント4]: 「無効」は最初から法的効力がない状態、「取り消し」は一度有効に成立した契約を遡って無効にする行為である。

今週のリーガルマインド(神崎の教訓) 「あなたの口から発せられる言葉は、時に鉛よりも重く、時には金銭よりも価値があります。そして、軽はずみな言葉は、あなたのビジネスを、意図せぬ危険に晒すナイフとなるでしょう。契約とは、単なる紙切れではなく、意思の結晶であることを忘れないでください。」

💭 青木の気づき(俺の学び)

  • 「冗談」が冗談でなくなるなんて、法律の世界は本当に恐ろしい。これからは、言葉一つ一つに責任を持って話さないとダメだ。営業時代のノリと勢いだけじゃ、ビジラボは守れない。
  • 契約書って、ただのルールブックじゃなくて、お互いの「本心」を明確にするためのものなんだな。面倒くさいとか言ってる場合じゃない。会社の未来のためにも、ちゃんと向き合って読み込まないと。

3. 次回予告 (Next Episode)

今回の学びで、俺は言葉の重みと契約の複雑さを痛感した。しかし、世の中には、善意の勘違いでは済まされない悪意が潜んでいる。ある日、ビジラボの新しいデザインを依頼した外部のデザイナーが、契約後に「デザイン料を倍にしないと、このデザインは渡さない!」と脅迫まがいの要求をしてきた。さらに、そのデザイナーは、ビジラボが社会の規範に反するような活動をしていると、あらぬ噂を流し始めたのだ。

「そんなの、絶対におかしいっすよ!契約は契約でしょ!?」と激昂する俺に、神崎さんは冷静に告げた。

「青木さん、それは『詐欺』や『強迫』、あるいは『公序良俗』に反する行為の可能性があります。決して、相手の言いなりになってはいけません」

次回: 第18回 騙された!詐欺・強迫と公序良俗

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