「納品が先?入金が先?」カネとモノのガチバトル!「同時履行の抗弁権」

ここで学べる学習用語:同時履行の抗弁権、危険負担
第21回:納品が先?入金が先?カネとモノのガチバトル!「同時履行の抗弁権」
前回、俺は斉藤さんと神崎メンターのおかげで、電子契約の便利さと印紙税、そして確定日付の重要性を学んだ。初めての契約書も無事に取り交わし、ビジラボは着実に前進している。よし、これで契約周りはバッチリだ!そう思っていた矢先、新たな問題が俺の前に立ちはだかった。今回は「納品と支払い、どっちが先なんだ?」という、ごく基本的な、しかしビジネスにおいて最も揉めやすいテーマだ。俺の楽観的な判断が、またしても会社を危機に陥れかけたが、神崎メンターの「同時履行の抗弁権」という言葉が、俺の目を覚まさせてくれた――。
顧客からの無茶な要求!先に納品しろってマジか!?
「青木社長!やりましたよ!フューチャー・コネクト社、ビジラボのSaaS導入決定です!」
斉藤さんの興奮した声が、インキュベーションオフィスの壁に響いた。俺も椅子から飛び上がり、思わずガッツポーズだ。フューチャー・コネクト社。大手企業の傘下にある、業界ではそこそこ名の知れたIT子会社だ。スタートアップの俺たちにとっては、喉から手が出るほど欲しかった大型契約。この実績があれば、今後の営業活動が格段に楽になる。
「やったな、斉藤さん!これでビジラボもようやく軌道に乗るぜ!」 「ええ!契約書も先方との調整を経て、電子契約で先ほど締結完了しました!社長も印鑑レスで楽だったでしょう?」
斉藤さんが笑顔で言う。そうだ、前回、紙の契約書の面倒くささや印紙税、確定日付の知識を詰め込まれた後、速攻で電子契約システムを導入したんだった。あれは本当に便利で、今回もスムーズに進んだ。よし、これで鬼に金棒だぜ!
「斉藤さん、それで納品はいつからだっけ?」 「それがですね…先方からちょっとお願いがありまして…」
斉藤さんが少し言い淀んだ。嫌な予感がする。こういう時って、大体ロクなことにならないんだよな、俺の経験上。
「お願いって、なんだよ?」 「システムを先に納品して、稼働させてほしいと。実際に使ってみて、問題がなければ、月末にまとめて利用料を支払う、という提案でした」
俺は一瞬、言葉を失った。先に納品して、先に使わせて、問題なければ払う?なんだそれ。 いや、待てよ。でも、これってチャンスじゃね?
「なるほどな…要は、先に使わせてみて、納得してくれたら払うってことか。なるほどなるほど。逆に言えば、それだけ自信があるってことでもあるよな!フューチャー・コネクト社にウチのSaaSの凄さを見せつけられる絶好の機会じゃないか!」
俺の頭の中には、先行投資という名の「実績作り」の二文字が踊っていた。大手企業の実績は、スタートアップにとって何物にも代えがたい宝だ。多少のリスクは冒しても、このチャンスは掴むべきじゃないか?
「いや、社長。それはちょっと…」 「え、何でだよ、斉藤さん。先行投資だ!大手クライアントに食い込むには、これくらいのサービス精神が必要なんだよ!」
斉藤さんは困った顔をしている。経理の彼女は、常に現実的な数字とリスクを見ている。それは理解できるんだが、俺は今、夢と希望に満ち溢れているんだ。
「でも、もし、納品して稼働させた後で、先方が『やっぱり支払いはできない』とか、『使いにくいからいらない』と言い出したらどうするんですか?先に納品したものの、支払いが滞るなんてことになったら、ビジラボの資金繰りが一気に厳しくなりますよ…」
斉藤さんの言葉に、俺は一瞬冷静になった。確かに、それは最悪のシナリオだ。だが、フューチャー・コネクト社は大手だぞ?まさかそんな詐欺みたいなこと、するわけないだろ。
「大丈夫だよ、斉藤さん。あそこは大手だぞ?ちゃんと契約書も交わしてるんだ。万が一そんなことになったら、裁判でも何でもして取り立てればいいんだ!」
俺は強気で言い放った。だが、その言葉には、どこか根拠のない自信と、かすかな不安が混じっていた。裁判なんて、実際にやったことないし、時間もお金もかかるのは知っている。もしそうなったら、むしろビジラボの方が倒れかねない。俺の楽観的な思考と、現実の厳しさとの間で、心臓がバクバクと音を立てていた。その時だった。
「青木さん、その認識は非常に危険です」
背後から、ひんやりとした声が聞こえた。振り返ると、そこには神崎メンターが、いつものように冷静な表情で立っていた。その声には、有無を言わせぬ強い圧力がこもっていた。俺は思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。
(マズい…神崎さんに聞かれてた…)
その一歩が命取り!メンターが突きつける「契約の公平性」
神崎さんの言葉は、俺の頭の中に渦巻いていた楽観論を、一瞬で凍結させるような力を持っていた。
「神崎さん…いつからそこに?」 「青木さんが『裁判でも何でもして取り立てればいい』と意気込んでいらした頃からですね」
神崎さんは俺の質問には答えず、鋭い眼光で真っ直ぐに俺を見つめる。
「青木さん。フューチャー・コネクト社との契約書は交わしましたね。では、その契約書には、納品と支払いの順序について、明確な取り決めが書いてありますか?」
俺は慌てて、PCのフォルダから先ほど締結した電子契約書を開いた。スクロールして確認するが、納品期日と支払い期日は書いてあるものの、「どちらが先に履行されるべきか」という明確な記述はない。というか、そんなことまで契約書に書くもんなのか?俺はこれまで、営業時代の感覚で「契約とは、まあ、お互い信用してやるもんだろ」くらいに思っていた節がある。
「えっと…納品期日は来週、支払い期日は月末としか…特にどちらが先とかは…」
俺は歯切れ悪く答えた。神崎さんは軽くため息をついた。
「やはり、ですね。では、青木さん、もしあなたが先にシステムを納品し、稼働させた後、フューチャー・コネクト社が『やっぱり支払いはしない』と言い出したら、どうしますか?あなたは『裁判だ!』とおっしゃいましたが、それは本当に得策でしょうか?」
神崎さんの問いに、俺は言葉に詰まった。裁判なんて、実際問題、時間も金もかかる。そんなことしている間に、ビジラボの資金は尽きてしまうだろう。
「う…その時は…困りますが…でも、そんなこと、まさか…」 「ビジネスは性善説だけでは成り立ちません。万が一に備えるのが法務の役割です」
神崎さんは俺の甘い考えをバッサリと切り捨てた。そして、核心を突く言葉を放った。
「青木さん。実は、あなたにはフューチャー・コネクト社の要求を拒否する、非常に強力な権利があります。それが『同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)』です」
同時履行の抗弁権?また聞いたことのない、やたら漢字が多い難しそうな法律用語が出てきた。俺は頭がフリーズし、斉藤さんも難しい顔で首を傾げている。
「ど…同時履行の抗弁権…?」 「その名の通り、『同時に履行するまで、相手の要求を拒否できる権利』です」
神崎さんの言葉は、まるで深い森の中で道に迷った俺に、一本の確かな道を指し示すかのように響いた。俺は、その言葉の意味を必死で頭の中で反芻した。
「カネを払うまで、モノは渡さない!」公平なビジネスを貫く法務の盾
神崎さんは、俺と斉藤さんの困惑した表情を見て、いつものように冷静に解説を始めた。
「青木さん、斉藤さん。契約というのは、通常、お互いが何らかの義務を負う『双務契約(そうむけいやく)』であることがほとんどです。例えば、売買契約なら、売主は物を引き渡す義務を負い、買主は代金を支払う義務を負いますね。賃貸借契約なら、大家は部屋を使わせる義務を負い、店子は家賃を支払う義務を負う」
俺は頷いた。それは当たり前、というかビジネスの基本だ。
「そして、この双務契約においては、原則として『お互いの義務は同時に履行されるべき』という考え方があります。これがビジネスにおける公平性の基盤であり、その公平性を担保するのが『同時履行の抗弁権』なのです」
「同時履行の抗弁権」……。なんだか、言葉の響きは難解だが、言われてみればすごく当たり前のことのように聞こえる。
「つまり、フューチャー・コネクト社が『先に納品しろ』と言ってきたとしても、ビジラボには『支払いが行われるまでは納品を拒否できる権利がある』ということです。逆に言えば、ビジラボが先に納品義務を果たさない限り、フューチャー・コネクト社も支払い義務を果たさなくても良い、ということにもなります」
神崎さんは、ゆっくりと、しかし確実に俺の頭にその概念を叩き込むように話した。
「そ…そうなんすか…?じゃあ、俺が『先に納品して稼働させてくれれば払う』と言われても、『いや、支払いが確認できるまでは納品しません』って言っても、法的には何の問題もないってことっすか?」
「その通りです。それが法によって保障されたあなたの権利であり、ビジラボを守るための盾になります。この権利を放棄して先に義務を履行してしまうと、相手が義務を果たさなかった場合、あなたは非常に不利な立場に置かれることになります」
神崎さんの言葉は、俺の営業時代の「サービス精神」という甘い考え方を木っ端微塵に打ち砕いた。俺は今まで、顧客の要望には何でも応えるのが良い営業マンだと思っていたが、それは会社のリスクを顧みない無謀な行動だったのだ。
【神崎の補足解説】同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)とは?
定義: 双務契約において、当事者の一方が、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒否できる権利(民法533条)。
ビジラボ(スタートアップ)において具体的にどう影響するか:
- 売買契約: 「代金と引き換えに商品を渡す」「商品と引き換えに代金を支払う」という関係。どちらか一方が先に履行を強制されることはない。
- システム開発契約: 「システムの完成・納品と引き換えに報酬を支払う」という関係。完成前に全額支払いを要求されたり、支払いをせずに納品を要求されたりした場合に、この権利を行使できる。
- 資金繰りの保護: スタートアップにとって資金繰りは命綱。先に納品・サービス提供をしたにもかかわらず支払いが滞ると、資金ショートのリスクが格段に高まる。この権利は、そうしたリスクから会社を守る重要な防衛策となる。
この権利を放棄するということは、相手に対する信用供与を意味します。信用供与は、資金力のある大企業同士の取引や、強固な信頼関係がある場合に限られるべきです。
「つまり、『お互い様』のルールってことですね!俺がシステムを納品する義務と、フューチャー・コネクト社が利用料を支払う義務は、同じレベルで同時に履行されるべきだと」 「その理解で間違いありません。そして、この『同時履行の抗弁権』を理解することと合わせて、もう一つ重要な概念があります。それが『危険負担(きけんふたん)』です」
危険負担?また新しい言葉が出てきた。俺は慌ててメモ帳を取り出した。
「神崎さん。『危険負担』って、なんすか?」 「青木さん。先ほどあなたが『先に納品すれば、相手に良い印象を与えられる』とおっしゃいましたね。もし、あなたがシステムを開発・納品する途中で、あるいは納品が完了した直後、しかしフューチャー・コネクト社による検収(システムが契約通りに作動するかを確認する作業)が完了する前に、ビジラボ側の責任ではない原因でシステムに重大な問題が発生し、使い物にならなくなったとしたら…誰がその損失を被るべきでしょう?」
「え、そりゃ…ウチじゃないですよね?俺たちが頑張って作ったんだし、こっちの責任じゃないんだから!」
俺は即座に答えた。システムが壊れたのは、例えば地震や雷といった天災だったり、フューチャー・コネクト社側のネットワーク障害だったりした場合だ。俺たちが悪くないのに、損失を被るのは納得できない。
「その通りです。それが『危険負担』の問題です。契約の内容が、何らかの理由で履行できなくなった場合、その損失を誰が負担するのか、という問題ですね」
神崎さんは、さらに具体的に説明を続けた。
「例えば、システム開発において、開発途中でサーバーがクラッシュし、データがすべて失われたとします。それがビジラボの責任であれば、もちろんビジラボが再開発の費用を負担することになります。しかし、もし原因がフューチャー・コネクト社のサーバー環境にあったり、予期せぬ天災だったりした場合、誰が損失を負うのか。これを契約で明確にしておかないと、後で大きなトラブルになります」
「うわ…そんなことまで考えないとダメなんすか…」
俺は思わず頭を抱えた。システムを『作る』ことしか考えていなかったが、『もしもの時』まで想定するのが法務の仕事なのか。
【神崎の補足解説】危険負担(きけんふたん)とは?
定義: 双務契約が締結された後、当事者双方のいずれにも責任のない事由によって、契約上の義務を履行することが不可能になった場合に、その損失をどちらの当事者が負担するか、という問題。
ビジラボ(スタートアップ)において具体的にどう影響するか:
- システム開発・SaaS提供:
- 開発中: 例えば、開発途中のシステムデータが天災で失われた場合。通常は、まだ完成・納品されていないため、開発側(ビジラボ)が再開発の費用を負担することが多い(請負契約の場合、仕事の完成義務があるため)。
- 納品後・検収前: システムを納品したが、顧客側(フューチャー・コネクト社)の検収が完了する前に、顧客側の環境でシステムに不具合が発生したり、データが失われたりした場合。通常は、売主(ビジラボ)に責任があるものとみなされやすい。ただし、契約内容で「検収完了をもって引き渡しとする」などと定めていれば、その時点まではビジラボが危険負担を負う。
- 検収完了後: 検収が完了し、システムが顧客に引き渡されたとみなされた後に生じた問題は、原則として買主(顧客)が危険を負担する。
- 契約での明確化: 「いつの時点で、誰が危険を負担するか」を契約書で具体的に明記することが極めて重要。これにより、予期せぬ損失やトラブルを回避できる。特にSaaSのような無形サービスでは、システムの稼働停止リスクやデータ損失リスクをどう扱うかが鍵となる。
「フューチャー・コネクト社との契約書では、この『危険負担』について、どうなっていますか?」
神崎さんの問いに、俺は再び契約書をチェックした。 「えっと…特に…細かくは…書いてないっす…」
神崎さんの表情が、一瞬だけ厳しくなった。
「青木さん、これは非常にまずいです。特にSaaSのような無形サービスの場合、システムの障害やデータ損失のリスクは常にあります。それがどちらの責任ではない場合でも、その損失をどちらが負担するかを契約で明確にしておかないと、莫大な損失を被る可能性があります」
俺は、自分の無知がビジラボをどれほど危険に晒していたか、ゾッとした。同時履行の抗弁権も、危険負担も、これまでの俺なら完全にスルーしていたポイントだ。
「性善説」だけじゃ生き残れない!青木の苦悩と新たな決意
神崎さんの解説は、俺の頭の中に衝撃波を走らせた。俺は今まで、ビジネスの世界は「お客様は神様」「信用第一」という、ある意味での性善説で成り立っていると信じ切っていた。しかし、神崎さんの言う「万が一」の事態に備える法務の視点は、俺のビジネス観を根底から揺るがした。
「神崎さん…俺、本当に甘かったっす…」 「甘い、というよりも、法務知識が不足していただけです。経営者は、会社の利益を追求すると同時に、会社をリスクから守る義務も負っています。そのためのツールの一つが、今日お話しした『同時履行の抗弁権』や『危険負担』といった法的な概念なんです」
斉藤さんが、俺の隣で小さく頷いている。彼女も経理として、俺の楽観的な判断に不安を感じていたのだろう。
「社長、フューチャー・コネクト社には、きちんと『同時履行の抗弁権』を行使することを伝えましょう。ビジラボの資金繰りを守るためにも、先に支払いを確認してから納品する、という方針を明確にすべきです」
斉藤さんの言葉は、俺の背中を押してくれた。頭では理解できても、実際に顧客に「先に払ってください」と伝えるのは、これまでの俺にとってはハードルが高いことだった。
「でも、どう伝えれば角が立たないんすか?相手も大手だし、『信用してないのか!』とか言われたら…」
俺はまた、相手の顔色を伺ういつもの営業モードに入りかけた。
「それは交渉の技術です。法的な権利があることを理解した上で、柔軟に対応策を考えればいいんです」
神崎さんは俺の不安を見透かすように言った。
「例えば、『弊社のルールとして、初回のお取引に限り、システムの納品と利用料のお支払いを同時に実施させていただいております。これは双方のリスクを公平に保つためのものであり、何卒ご理解いただけますと幸いです』といった形で、あくまで会社の『ポリシー』として伝えることも可能です」
なるほど…。ストレートに「法的に拒否できます」と言うのではなく、会社のルールとして、公平性を担保するため、という建前で伝えるのか。これなら、相手も納得しやすいかもしれない。
「…分かったっす。今回学んだことを、しっかり活かします。お客様との信頼関係も大事だけど、それ以上にビジラボという会社を守ることが、俺の社長としての役割だ。もう、性善説だけで突っ走るのはやめる。法務の知識を、ビジラボを守るための『盾』として使いこなしてみせる!」
俺の心の中で、熱い決意が燃え上がった。今までの失敗から学び、前に進む。それがビジラボの、そして俺の成長の証になるはずだ。
法の盾を手に、未来のトラブルに備える小さな一歩
俺は斉藤さんと相談し、フューチャー・コネクト社へのメール文案を作成した。神崎メンターに教えてもらった「同時履行の原則」と「双方のリスク公平性」という言葉を盛り込み、丁寧かつ毅然とした内容にした。
正直、送る時はドキドキした。これで契約が流れたらどうしよう、という不安が頭をよぎった。だが、俺はもう、「大丈夫だろう」という根拠のない楽観論には頼らないと決めたんだ。ビジラボを守るため、そして、今後ビジラボと関わる社員や顧客のためにも、今、この決断をするべきだ。
数時間後、フューチャー・コネクト社から返信が来た。 「貴社のポリシー、承知いたしました。確かに、お互いのリスクを考慮すれば当然のことかと存じます。つきましては、納品予定日の前営業日までに、利用料をお支払いいたします」
メールを読み終え、俺は思わず大きく息を吐いた。契約は流れるどころか、相手は俺たちの主張を理解し、快く受け入れてくれたのだ。
「やった…!斉藤さん、見てくれ!ちゃんと理解してくれた!」 「ええ、社長!良かったです!これで、資金繰りへの不安もなく、システムの納品に集中できますね!」
斉藤さんの笑顔を見て、俺は改めて法務の重要性を痛感した。法は、ただの「ルール」じゃない。時には攻撃するための「矛」にもなり、そして今日のように会社を守るための強固な「盾」にもなる。
「法務、マジでヤバいけど、やるしかねぇ…。俺はビジラボを守るために、もっと強くならなきゃいけないんだ!」
俺は、法律という名の新たな力を手に入れた喜びと、その責任の重さを噛みしめながら、次の一歩を踏み出す決意を固めた。
2. 記事のまとめ
📚 今回の学び(神崎メンターの総括)
[学習ポイント1]: 「同時履行の抗弁権」は、双務契約における公平性を保つための重要な権利。相手方が自身の義務を履行するまで、自身の義務の履行を拒否できる。
[学習ポイント2]: この権利を放棄して先に義務を履行すると、相手が債務不履行に陥った際に、自身の会社が一方的に不利な立場に立たされるリスクがある。
[学習ポイント3]: 「危険負担」は、契約が当事者双方の責任によらず履行不可能になった場合の損失を誰が負担するかという問題。これを契約書で明確に定めることが、予期せぬトラブルや損失から会社を守る上で極めて重要。
今週のリーガルマインド(神崎の教訓) 「ビジネスは、夢や情熱だけでなく、常に『万が一』のリスクに備える必要があります。法は、あなたのビジネスを守るための『万が一』の備え。性善説だけでは成り立たない現実から、あなたの会社を守る強固な盾となるのです。」
💭 青木の気づき(俺の学び)
- 「お客様の要望には何でも応えるのが誠意だと思ってたけど、それは会社の首を締める行為にもなりかねないんだな。相手を信用しないってことじゃなくて、ちゃんとルールに基づいて、自分たちを守る視点を持たないとダメなんだ。」
- 「契約書の内容だけじゃなくて、契約を履行する順序とか、もしトラブルが起きた時に誰が損害を被るか(危険負担)まで、ちゃんと考えて契約しないとダメだ。法務って、本当に奥が深いし、経営の要なんだと痛感した。」
3. 次回予告
フューチャー・コネクト社への納品と支払いの問題は、俺が「同時履行の抗弁権」という強力な盾を使ったおかげで、無事に解決した。これで一安心だと思った矢先、システムの稼働テスト中に、開発したSaaSに重大なバグが見つかってしまう。顧客からの怒りの電話。「こんなの使えないじゃないか!契約解除だ!」と怒鳴りつける声に、俺はまたしてもパニックに陥る。契約不適合責任って何だ?神崎メンターは、俺に冷静にこう告げた――。
次回: 第22回 約束違反!債務不履行と損害賠償

